コードギアスの4層構造

うん、、、基本的に、僕は大枠のシナリオ自体は、特に文句はないんだ。個別の話も、ここまで見事なグランドデザインとキャラクター造形が描かれてしまうと、もう感情移入しているから、多少の演出の齟齬では特にダメだ、とは思わない。けど、、、この物語って、3層構造にわかれるはずで、

1)エリア11(日本)の植民地解放というナショナリズムの物語

2)3軸を中心とした地球統一のインターナショナリズムの物語

3)まだ謎だが、ブリタニア皇帝が語る神との戦い


という3層に分かれるのはなんとなく想像がつく。3)がどういう形で展開するのかは、まだ見えていないので、テキトーな思い込みですが・・・。3)のイメージは、SF的なもので、エヴァとかああいう話です。・・・でも、だとすると、全50話と考えても、1)日本の独立戦争というドラマが、R2(第二期)の TURN 8『百万 の キセキ』まで、つまりほぼ30話分も費やされているのは、観客を感情移入に誘い込むことや、そのあまりにいい出来からいっても、わからないでもないのだが・・・やはり冗長すぎたとしか思えない。

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080615/p2

 ペトロニウスさんの分析にはいつもいろいろ気付きを与えてもらっています。コードギアスの物語をマクロの視点から見た時、この3つの層が重なって存在しているという指摘はとても鋭くて、おおお、と思うのですが、同時にこの3層構造がコードギアスの物語の軸なんだと言われると、微妙な違和感を覚える人も多いんじゃないかと思います。

 それでですね。ここにマクロの視点ではないもう一つの視点

0)ルルーシュ少年が個人の小さな幸せを追い求める物語

 というのを置くと、しっくり来るんじゃないかなと。ルルーシュの理想は徹頭徹尾、自分の手の届く範囲の人々…ナナリーやスザクやアッシュフォードの面々との穏やかな日々を取り戻す事であって、勢いマクロの世界状況に接続してしまうのは、あくまで手段であり、あるいは心理的に仕掛けられたトラウマ、呪いのようなものであってそれをルルーシュ自身が望んでその世界に身を置いているわけではないんですね。

 では、その背景世界で蠢くマクロの緻密な状況設定というのは添え物に過ぎないのかというと、そうでもないんではないかという感触もあって。これは仮説の域を出ない話ではあるのですが、それぞれの層に、それぞれ望んでその世界で戦っている主人公が設定されていて、ルルーシュの物語と同時並行的に進行しているんじゃないんだろうかという予想…妄想を持っていたりします。

 ナショナリズム民族自決の物語に身を置いているのは他ならぬもう1人の主人公である枢木スザクですね。そして神々の闘いに身を置いているのはルルーシュの父、皇帝シャルル・ジ・ブリタニアでしょう。そして、ペトロニウスさんが指摘しているインターナショナリズムの物語、3軸の国家間のバランスの中で緩やかな世界統合を目指す物語に身を置いているのが、第2皇子シュナイゼルエル・ブリタニアなんではないんだろうか、と。

 0)小さな幸せの追求、個人の救済の物語。主人公:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
 1)ナショナリズム民族自決の物語。主人公:枢木スザク
 2)インターナショナリズム、世界統合の物語。主人公:シュナイゼルエル・ブリタニア
 3)神々との闘い、人類の革新の物語。主人公:シャルル・ジ・ブリタニア

 この4つの物語が同時並行で進んでいるんじゃないかなと思うんですね。

 特に注目したいのが、いまだそのキャラクターの全貌の見えない第2皇子シュナイゼルです。数少ない彼の言動から見て取れる、不確定性を楽しむ、未決の未来を信用する性向、自らの覇道をよしとせず、一歩引いたバランスを求める姿勢には、自分の世代だけではどうしようもない世界の未来を信じる巨視的な眼差しが隠れているようにも見える。

 今後、ルルーシュが世界の勢力バランスに関わるような状況に物語が発展するとして、その時シュナイゼルが何をしてきて、どこを目指しているのかが明らかになった時、そしてそれがルルーシュが掲げるスローガンをより緻密に先取りしたものだった場合、ルルーシュは再び進退極まってしまうでしょうね。R2第7話でナナリーの決意にその思い込みを徹底的に叩きつぶされたように。

 コードギアス反逆のルルーシュという物語は、ルルーシュという一人の少年が、何かを求め、巨大な世界に立ち向かい、その世界の巨大さを思い知りながら、敗北していく物語なのではないかと思っています。それは、アバンタイトルでのCCの語りの数々が、やがて来る破局を予感させるものであったりする事にも繋がりますね。

“夢は、運命を切り拓くのか。想いは、全てを越えられるのか。儚き花は、風に舞うのが常だというのに。”

例えばこの、R2第10話のアバンタイトルの締めくくりの台詞のように。