咲世子の行動原理

 コードギアスR2第11話「想いの力」はルルーシュに仕えるメイド、咲世子さんが初めてその内面を覗かせたエピソードでもあります。とりわけ注目したいのは、アバンタイトルでのロロとのやりとり。

“人間関係は円滑にせよと……ゼロのご命令ですし”“私はゼロと、(咲世子の地声で)ルルーシュ様に仕える女ですから。”

 このセリフから滲み出ているのは咲世子はゼロとルルーシュという2つの人格のうち、ルルーシュの側面に重きを置いているのではないか、という事なんですね。そう考えるとシャーリーにむやみに優しくしてしまうのも、何か母親的なお節介に感じてほほえましくも感じます。重要なのは、咲世子は1期と2期の間中華に避難しており、皇帝の忘却ギアスの対象になってないんですよね。シャーリーとルルーシュの仲睦まじい姿を最も知っているキャラクターでもあるんです。

 第8話で仮面を取ったゼロに軽く驚いた後にっこりと微笑むシーンの意味の取り方もなかなかくせ者で。もしこの時初めてゼロがルルーシュだと知ったとすると、驚きはわかるが微笑みの意味が取れない。予め知っていたとすると驚き方が大仰にも見える。総合すると、知ってはいたが、直接明かされる事はないと思っていた、そしてそれを知らされる事は喜ばしい事だと思っていたと言う事になりますね。なかなか、複雑な感情です。

咲世子とディートハルトの接点

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 ちょうどよいまとめがありましたので引用させていただきますが、咲世子とディートハルトの接点は作中ではそれほど明確には描かれておらず、1期23話「学園祭宣言」にて学園に潜伏するスパイとしてすでに組織に組み込まれていたという事、そして1期ラストからR2第8話までの間ディートハルトと共に中華にわたっていたという以上の事はわかりません。ですので以下の推論はおおよそ妄想含みだという事は予めご了承ください

ディートハルトはゼロの正体を知らない?

 ここで、ひとつ大胆な仮説を提唱してみましょう。なんどか見返したのですが、どうも、ディートハルトがゼロの正体をブリタニア皇子であると言う事を知っているという描写は存在しないんですよね。ゼロが、アッシュフォード学園の学生である事は、知っているようではあるのですが…もしゼロの正体が皇族であると彼が知っていたならばそれを組み込んだ戦略を提唱してもおかしくなさそうなのに、そういった言及は一切ないんですね。これはどうゆうことか、と考えると…ディートハルトと常に行動を共にした咲世子さんがその情報を意図的に隠蔽…あるいは偽りの情報を使ってディートハルトを騙してきたのではないかという可能性がある?中華にいる間もディートハルトに忠誠を尽くしながら決してルルーシュを裏切らなかった?可能性はあるとしても何故そんなことを?と、考えると咲世子さんの行動原理、守るべきものの正体が見えてくる気がします。

すべてはルルーシュの為に

 それは、すべてルルーシュの身の安全、正体の保全のためだったのではないかと。断片的な描写ながら、彼女は極めて優秀なメイドであり、そしてエージェントとしても卓越している事が伺えます。そんな彼女が、そもそもゼロの正体がルルーシュである事に気がつかないということがまずありえない。過去の事例を見るに、ルルーシュに近しい人物でゼロに直接接触した人物はほぼ全てゼロの正体を喝破しています(笑)。咲世子さんはゼロとの直接の接触こそないものの、学園内に残された物的証拠等から類推していても、おかしくない。個人的には第1期15話「囚われのナナリー」あたりでのルルーシュの奇矯な行動がきっかけになったんじゃないかななどと思っていますが。ちょうどこのころからディートハルトが黒の騎士団の組織図を引き始めてるんですよね。
 そしてゼロの正体がアッシュフォード学園の学生ではないかと推理したディートハルトが学園の調査を始めた時、その動きを察知した咲世子さんが、自ら黒の騎士団に飛び込む事で情報を操作しようとしたのではないか?という妄想がでてきたりしています(笑)。

守るべきもののために全てを捨てて影となる

 この、守るべきもののために己を捨てて影に徹するという生き方をしている人物がコードギアスにはもうひとり居て…それはカレンの母なんですね。娘との約束のために己を後妻の住む屋敷のメイドとして生きるカレンの母と、ルルーシュを守るために己を捨てて黒の騎士団の一員となる咲世子。まさに目的のために手段を選ばない生き方の極地とも言えそうです。この2人の最大の違いはその能力…性能差なわけですが…もしこの2人が対比だとするとなかなか厳しい話だなと思いますが、はたして。