765comm@ndから始まるMAD新時代の可能性
アイドルマスターのステージ背景をブルーバックにする裏コマンドが発見され、ニコマス界隈*1で話題騒然となっています。
アイマスL4Uには驚くべき隠しコマンドが仕込まれていた - 敷居の部屋
765comm@ndとは (ナムコマンドとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
詳しくは、敷居の先住民さんのエントリを参照していただくとして、どうもこの隠しコマンドの発覚は、メーカーであるバンダイナムコの関係者からのリークなのではないかと言う事がまことしやかに囁かれています。あまりにも、タイミングが良すぎるんですね。
タイミングとは、もちろんニコニコ動画が新バージョンへと移行し、MAD作品に対するスタンスを明確にした事ですね。7月5日の発表会直前まではニコニコ動画からMADが消えてなくなってしまうんじゃないかと心配されていたものが、発表会でドワンゴの小林社長からMADは文化との力強い言葉が飛び出し、権利者と折り合いをつけながらMADを社会的に認めてもらえるよう努力する旨が語られたんですね。
アイマスMADが合法化する日
アイマスMADが合法化するにはいくつかのハードルがあって、ひとつは、ゲームプレイ動画をキャプチャーし加工して公開する事をバンダイナムコに認めてもらう事。もう一つはゲームプレイ動画に合わせて使われる他の著作物―主に楽曲の使用を個々の権利者に認めてもらう事、最低でもこの2つが必要で、仮にバンダイナムコが前者を認めても、後者が認められなければそれは非合法の動画になってしまうんですね。それ故にバンダイナムコとしても簡単に動画の使用許可を出すわけにはいかなかった。
しかしニコニコ動画で8月から実装がアナウンスされているニコニ・コモンズでは、素材単位での使用許可という形が取れるんですね。アイドルマスターというソフトそのものを自由に使っていいよと言うのではなく、この動画とこの動画は素材として使っていいですよ。合わせる音楽等も許可されたものにしてくださいね。でないと許可を取り消しますよ。といったスタンスを取る事が可能なんですね。今回の事件でアップされたブルーバック動画のいくつかは、そうゆう形で公認されてニコニ・コモンズに登録されるんではないか、という希望的観測を持っていたりします。いかにも素材である動画から、まずは様子を見てくるんではないか。という事ですね。
ニコニ・コモンズはライセンスかガイドラインか問題
こちらで興味深い指摘がされているんですが、ニコニ・コモンズはライセンスではなくガイドラインなのではないかという予測ですね。ものすごく大雑把に自分の理解を述べると、ライセンスは設定された条件での厳密な運用が求められるが、ガイドラインは大雑把に権利者にとって都合のよいように運用出来るといったような解釈をしています。ライセンスだと、契約違反として民事訴訟を起こす事が可能だけれども、ガイドラインだと個々のケースごとに著作権法で争わなければならないと言う事でもあるのかな。つまり、ガイドラインにとどめる限りは、基本的に現状の運用と変わらないという事ですね。ただ、利用者にとっては、境界線を見定めやすくなるメリットがある。無用の軋轢を出来るだけ軽減しようという事で、確かになかなかベターな考え方に思えます。
アイマス動画のガイドラインを考えてみる
仮に、バンダイナムコがアイマス動画の一部を公認する場合、そのガイドラインがどうなるかちょっと考えてみましょう。まず、当然ですが「他者の権利を侵害しない事」。これは明記されるでしょうね。そして「キャラクターのイメージを損なう動画に使用しない事」。こういった条文も入るでしょう。これらは、全て動画制作者の良心に委ねられるわけですね。勢い余ってガイドラインに抵触してしまう動画も当然出てくる。それが明らかに行き過ぎなら削除されるし、問題が生じないようであれば、黙認される。考えてみても今とまったく変わらないですね。
そして、ガイドラインが動画制作者の良心に訴えかけるものであるのならば例えばこんなガイドラインもありえるんじゃないかと思うんですね。「アイドルマスターLiveForYouの所有者に限り利用を許可する」。仮にこんな条文があったとして、そこになんら拘束力がないのは明らかです。それを調べる方法なんてないですからね。しかし、だからこそこれは動画制作者の良心に直接働きかけてくるんじゃないかと思うんですね。
MADを作るのは、それが楽しいから
MAD制作者の大多数は、MADを作ること、作った動画を人に見てもらう事、それ自体が楽しくて仕方がなくてやってるんですね。そして、各々が主戦場にしているジャンルに少なからぬ愛情を持っている人が、多数いる。これは、例えばMADを作り始めた時点ではそれほど原作に思い入れがなくても、作を重ねる毎に自然と愛情が深まっていくんですよね。だって、そのほうが作っていてもっと楽しくなってきますから。深くコミットして、対象をより良く理解しなければ、面白いMAD、人に受けるMADを作る事は困難なんです。だからそうゆう人が、仮に動画を作り始めた頃は権利者の立場を軽視していたとしても、自然とその重みを増していくんですね。だって、自分に嘘をついてまでやっても、そんなのはちっとも楽しくないですからね。もっと楽しくなるために。その為なら簡単に守れるガイドラインは守ったほうが、精神衛生上心地よいんですね。そして、ニコマス界隈というのはMAD制作者の中でも特に原作への愛情の深さには定評のある人たちなんですね。
コンテンツホルダーと動画制作者の理想的な関係
ニコマス界隈の人たちは、とても空気を読む能力に長けている。これはTwitterやブログ、ニコニコ動画上でのやりとりで何十人かのニコマスP*2と交流してきて、本当にそう思うんですね。彼らが、紳士の嗜みとして権利者が提示するガイドラインに対して最大限の敬意を払い、権利者側もまた多少のやんちゃには目をつぶりながらも、動画制作者を生暖かく見守る。そうゆう関係ができあがる素地は既に出来上がってる。それを誰の目にも明らかな形で、コンテンツホルダーと動画制作者の理想的な関係として提示できれば、こういったスタイルが標準になっていく可能性がある。
これは、はっきり言って妄想が過ぎるとは思う。ただ、765comm@ndの存在と、ニコニコ動画の方向性を考えた時、何かがはじけるような直感がしたんですね。ひとりのニコ厨が見た真夏の夜の夢。これが正夢となる日を願ってやみません。