ニーナとスザク ユフィの遺志を継ぐ2人の対比

 ニーナのことについて考えています。
“ニーナくん、その矛盾はさ、スザクくんだけじゃない、君も殺すよ”
 R2第16話にてロイドがニーナに突きつけた言葉。こちらであまり深く考えずに書き留めた件について少しじっくり煮詰めてみました。上のロイドの言葉は、言葉通りに正しく解釈すると、スザクに<<その矛盾>>を背負わせることは、スザクだけでなくニーナの<<何か>>をもまた殺すということになるのでしょう。

スザクの矛盾とは何か

 スザクの抱える矛盾とは何か。それは軍人=敵対者を排除することを義務付けられたものが、人殺しを極端に嫌う、ということ。これは1期11話でのセリフに基づく解釈です。スザクの抱えている矛盾というのは、実はそれだけではないのですが、ここではあくまでロイドの示した矛盾、ということで話を進めます。念を押しておくと、スザクの抱えている葛藤は、それは矛先がイレブンだからということとは関係なく、戦う意思のないものに対して銃口を突きつけることなんです。イレブンとの同族意識というのは、本来的には関係がないんですね。

ユフィの遺志の解釈の違い

 そして、ニーナとスザクとでは、共にユフィを敬愛しその遺志を継ごうとしているにも関わらず、その遺志に対して決定的な解釈の違いがある。それは、ギアスの力の存在を認知しているかどうかというのが大きな別れ目になっているんですね。
 ギアスの力の存在を知っているスザクは、あの虐殺事件がユフィの意思によるものではなく、ギアスによって強制されたものであることを知っている。そしてユフィの願いが、平和でみんなが幸せに暮らせる世界を作る事であることに、迷いはない。

 対するニーナにとって、ユフィ…ユーフェミアという存在は、例え出自がイレブンであっても分け隔てなく優しく接する博愛主義者でありつつ、同時にブリタニアから離脱しようとする反逆者に対しては一切の情けをかけない虐殺皇女という2面性をもったキャラクターとして、受け入れられている。それは客観的な事実とユフィというキャラクターをよく知る人物、及び視聴者にとっては矛盾を孕んだ解釈なのだが、ニーナの中ではそれは矛盾なくひとつの人格の在り方として理解されているんですね。ブリタニアに帰属し忠誠を誓うものには慈愛をもって接するべきだが、そうでないものは<<世界の平和のために>>皆殺しにしたほうがよい、と。

 どちらのユフィも世界が平和であることを望んでいるのには違いがない。そしてニーナはおそらく本気で、ブリタニアに対する反逆者には死をもって報いるのがユフィの遺志だと信じ切っている。日本人という名を取り戻すために武装蜂起するイレブンというのは、まさにその遺志に従って排除すべき存在であり、その願いを確実に叶えるためにこそ、究極の破壊兵器“フレイヤ”の開発に心血を注いだ…それがニーナという人物なんですね。

嘘のない想いであれば許されるのか

 ここで、もう一つ念を押しておかなけらばならないのは、ニーナの、このユフィを想う心というのは何一つ嘘偽りのない、ニーナの目に映った事実から導き出された純粋な本心なんですね。おそらくこの考えを改めることは…ギアスの力の存在を認知し納得の行くまで長い時間をかけられるのならばともかく…どれほど言葉を尽くして説得しても、それを覆すことは困難でしょう。仮に説得されてしまったとしたら、それは嘘による誤魔化しをして自らの本心を押さえつける行為に他ならない。それは本来好ましいとは思われない行為であり、今まさにスザクが直面している葛藤でもあります。

 しかしその嘘偽りのない純粋な思いは、新たな憎しみと悲しみの連鎖を生むことが、目に見えている。それはやはりどんなことがあっても阻止されなければならない望みなんですね。それはニーナがユフィを想う心がどれほど純粋なものであっても、それに対峙するスザクが逆に本心に鎖をして矛盾に葛藤していたとしても!

 おそらくは何らかの形で対決の形をとるであろうニーナとスザク。2人のユフィの信奉者が対峙するとき、そこに何が描かれるのか。今からとても楽しみです。