ルルーシュの優先事項
“格納庫にて優先事項第3位を発見”
コードギアスR2第18話の咲世子さんのセリフ。これは、ちょっと分かりにくいですが格納庫に保管されていた紅蓮聖天八極式のことを指しているんですね。このセリフからルルーシュにとっての優先順位を類推すると
1位:ナナリーの身柄の確保
2位:カレンの救出
と考えるのがおおよそ妥当なところであり、おそらくはそうなのだろうと私も思うのですが、実のところ、この1位と2位の順番はどちらかというのは作中では明言されていないんですね。そもそも、ルルーシュにとってナナリーの安全の確保が、本当に最優先事項だったのかどうかは、疑ってかかる必要がある。
ナナリーを人任せにしたルルーシュ
そもそも、第17話「土の味」において、ルルーシュはナナリーの身の安全を全てスザクに託し、自らはゼロとしての職責を全うしようという決断を、下そうとしている。それは誤解により結果的には御破算になったが…この時のルルーシュは「ナナリーを全てにおいて最優先におく」というルルーシュの行動原理を自ら変えようという意思を示した瞬間だったんだと思っている。そもそも、ルルーシュ自らナナリーの救出に向かった前回のブラックリベリオンの時と比して、今回のルルーシュはナナリーの救出を咲世子とロロという、“他人任せ”にしてしまっている。これは、ルルーシュの内心の大きな変化だ。
ナナリーの自立とルルーシュの世界の拡大
この変化がもたらされたのは、言うまでもなく第8話「棄てられた仮面」におけるナナリーの自立と、ルルーシュの世界の拡大によるものだ。この時ルルーシュはカレンとシャーリーの言葉によって、自らが守るべきものがナナリー以外にも存在することに初めて気付くことになる。ゼロを最期まで演じきること、平穏な世界を取り戻すこと。それはルルーシュにとってナナリーの安全と同じくらい重大な事柄になったんですね。
思考による認識の限界
それはその後のルルーシュの作戦行動の端々に現れていて、しかし理屈から先に考えるルルーシュにとっては、全てにおいてナナリーを最優先に考えるという自らの根本原理を変更すると言うことは、極めて重大で犯しがたいものなんですよね。17話はそのことを自ら納得する最大のチャンスではあった…しかしその優先順位を変更する機会は…永遠に失われてしまった。ナナリーが居なくなったからと言ってその順位が繰り上がると言うことはあり得ない。ルルーシュは、ナナリーを全てにおいて最優先するという自らが自らに課した呪縛に縛られて生きていくことになる…そしてその先にあるのは破滅しかない。
その呪縛を解くことができるものが…まだ残っているのだろうか。絶望を…乗り越えることはできるのだろうか。それはまだ見えない。しかし、仄かな希望は、絶望からこそ生まれ出づるという前期の最期の言葉を、信じたい。そう願っています。