正義の味方のおとぎばなし ―ルルーシュの嘘が世界に残したもの―

電視の部屋:作品チェック:コードギアス反逆のルルーシュR2最終回~ウソに乗る話~ - 今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

さて「コードギアス」の最終回の話に移ります。先に言っておくと、この話、納得できない人にはず〜〜〜っと納得できないと思うんですよね(汗)おそらく“罪”とか“償い”に拘る人なんかは特に(汗)…しかし、その部分は多分、他の多岐の物語においても論じる事がある問題ではないかと思うので、今回は別の機会としたいです。
で、もともと、オチ自体は僕はゼロ・レクイエムという言葉が出た時点で「『ガンダムW』じゃね?」とか言っていてwまあ、それに近い位置に着地したなと思う向きもあるかとは思います。また、自らが悪として倒される事前提に悪を演じる物語は「泣いた赤鬼」とかじゃないですけど、これまでの物語の中でも無いワケではありません。

しかし「コードギアス」ではスザクが扮した仮面の騎士ゼロが皇帝ルルーシュを討ちます。

僕は、ここが大きく違うと思っています。これまでの擬態悪の者たちは、僕が知る限り自分が討たれた後の世界がどうなるかは大雑把に言ってしまうと感知していなかった。ただ「託した」だけなんですね。……え?ルルーシュも「託した」だけですか?いや、そうも言えるんですけどね(汗)僕はそうは思っていない。少なくともルルーシュは世界に対して「ギアス」をかけた(スザクとそんな話をしていますよね)それは単に願いを「託す」というより「呪詛」に近いものと僕は思います。

 LDさんに先を越されてしまった(笑)。そう。ルルーシュの吐いた嘘というのは、決して上手い嘘ではないんですよね。ルルーシュの考えていることなんて、ルルーシュと近しい人たちならばちょっと考えればすぐにわかる。スザク扮するゼロの正体だって、スザクを知る人間なら一目見た瞬間にあれはスザクだってすぐに見破るでしょう。藤堂さんも思わず声を上げそうになってしまうし、スザクとルルーシュの物語にずっとつきあってきた私たちも、ゼロが登場した瞬間、誰もがスザク!と心の中で叫びましたよね(笑)。

 そもそもルルーシュは、そんなに嘘の上手い子じゃないんですよね。1期の時点で、ユフィをはじめ昔からルルーシュを知る人たちにはあっさりとその正体を見破られて…ナナリーが人の嘘に敏感になったのも、ルルーシュが昔からあまりにもバレバレの嘘を吐き続けてきたからなんじゃないかと思ったりもします。

 もちろん、ルルーシュ自身は、本気で世界の憎しみの全てを一人で背負って消えようと思っていた。ナルシシズムの中で満足して生涯を閉じたんだと思う。だけれどもそのルルーシュの幼稚な嘘は直情径行を絵に描いたようなカレンにすら見透かされ…。残されたものたちは、ルルーシュがどうしてそんな嘘を吐き通したのかと言うことを考えずにはいられないんですよね。

 特にカレンにとってはR2第7話での自らの言葉
“私たちに夢を見させた責任があるのよ!最後の最後まで騙してよ!”
これをルルーシュが最後の最後まで守りきったと考えてしまう。それは、カレンの認識の世界で、本当はどうだかわからないもうルルーシュの中にはまったく残ってなかったかも知れない。でもそれは関係ないんですよね。カレンがそう思って、そのルルーシュの嘘にあえて騙される事を選んだ。それ自体に意味がある。

 不器用で激情家で思い込みが激しくて詰めが甘くて、そして優しい。そんな愛すべきルルーシュを知る人たちは、そのルルーシュの想いが何の打算もないただの願いだということを知っているんですよね。その幼さが支払った代償の大きさは計り知れないし、また作品に表に現れないところで不幸の種もばらまいているかもしれない。だけれども、だからこそ最後の純真な願いから出た大嘘にくらい、騙されてやってもいいじゃないか。悪の皇帝が正義の味方に倒されて世界に平和が訪れました。なんていう、今時誰もやらないくらい素朴な大嘘にあえて乗っかってもいいんじゃないか。そんなふうに思います。

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