不思議と不自然は違う

このっ、バカ共が!: 松浦晋也のL/D
10月2日午後2時までに提出された疑問と回答: 松浦晋也のL/D

 9月28日に行われた中国の有人宇宙船神舟7号の、船外活動の映像が捏造ではないかと言う意見に対して、ジャーナリストの松浦晋也さんが中心になって、これ以上ないほど真摯に疑問に答えていらっしゃいます。宇宙開発に興味のある方はまとめ記事のほうだけでも読むとなかなか面白いですよ。

 それにしても、人の認識の不一致というのは面白くもあり、恐ろしくもある。確かに、船外で振られる旗の動きは、地上の常識から考えて不思議ではある。虚空に飛んでいく謎の光点とその挙動も不思議ではある。ここでこれを不思議と感じるのは人間として正しい感性だし、私も見ていて実際、「おお不思議な動きだなー面白い」と感じるわけです。

 だけれども、不思議であることと不自然であることは違うんですよね。旗の動きは、真空かつ無重力下での物体の挙動の特性の知識があれば、まったく不自然ではない妥当な動きをしている。光点が加速しているように見えるのも使用されているカメラの特性を把握していればとても納得のいく自然なものです。見かけ上は不思議な事象に対し、納得のいく妥当な理由がないか探求すること、それが科学する心なんです。

 例えば空に虹が架かる。例えば夕焼けが赤く見える。例えば熱射に照らされたアスファルトの上に水たまりが見える。みんな、不思議な現象です。だけれどもみんなそれは科学的に説明できるし、再現可能な現象なんですよね。この神舟7号の映像は、宇宙空間でならあり得る事象を、正しく映し出している。それを自らの知識のなさを振りかざして不自然だ不合理だと詰るのは、言葉は悪いですが私はバカですと世界中に向かって叫んでるようなものなんですよね。

 繰り返しますが、理解できないものは不思議と感じるのは、正しいんです。それは正常な反応です。しかし、それを理解できないという理由で不自然だと喚くのはバカのやることだ、という話なんですよね。知らないことには謙虚になりましょう。回答に疑問を感じたら自分で調べましょう。それが出来る人間は決してバカ呼ばわりはされませんから。