910対20という数字の重み

ニコ動930万会員に 有料会員減、黒字化策は - ITmedia NEWS

 ニコニコ動画の有料会員数が20万人を越えたところで足踏みしているようですね。7月末から100万人近く会員数が伸びているものの、有料会員はほぼ横這いです。この間、有料会員にとって魅力的なサービスが特に実装されていないというのもありますが、このあたりがニコニコ動画にお金を払ってもいいと思っている人の上限なんでしょう。

 20万人×500円で1億円の売上。7月時点でアフェリエイトとバナー広告併せて5000万円の売上。これが仮に倍増していたとしても1億円で、支出の3億円までまだ1億円以上足りない感じですねえ。10月1日から広告枠を3.5倍に拡大したそうですが、全部埋まれば収支が揃うという皮算用、なのかな。

ニコニコ動画の向かう先

 現状、ニコニコ動画が収益をあげようと思った場合、3つくらいの方針が考えられると思います。

  1. 会員数を増やして、その数字を武器に企業に広告を買ってもらう
  2. 会員数を増やして、薄く広くお金を使ってもらう
  3. 現状の規模を維持しつつ、有料会員がより積極的にお金を払えるサービスを拡充する

1に関しては、会員数が増えればそのまま維持費も嵩むわけで、バナー広告の面積を増やさなければ結局根本的な解決にならないという問題があります。
2に関しては、うまく行けば一番インパクトは大きいですが(200万人が100円支払えば2億円の売上で余裕で予算クリア)、まだ良いアイデアが出ていない感じですね。
3は2に比べるとインパクトは小さいですが、例えば20万人の1割の2万人が2000円支払えば、4000万円の売上です。2万人という数字は当てずっぽうですが、魅力的なサービスがあればそれくらい払ってもいいという人がいるのは実感としてあります。
現状ニコニコ動画は1の方針で売上の拡大を図っているようなのですが、私としては2や3の方向も平行して行かなければニコニコ動画の将来は厳しいと感じますね。

守るべきは、910万人か、20万人か。

 正確な収支がわかりませんので憶測でしか言えませんが、ともかくニコニコ動画の収入の50%近くはわずか20万人が支えているんですよね。言ってしまえばこの20万人というのは残りの910万人と同じ価値をもった存在なんですよ。会員数増はそのままバナー広告の単価アップにつながりますので、会員をどんどん増やして、バナー広告を買ってもらって収入を増やそう、というのは理解は出来ます。でもですね。ニコニコ動画が大好きで仕方がない20万人の有料会員が、動画を見る手を止めてまでバナー広告をクリックするかっていったら、しないですよね。最近のバナー広告の多くがMMORPGなどの無料ネットゲームの広告になっているのを見ても、それらの広告をクリックするのは暇つぶしにニコニコ動画を訪れて、別の暇つぶしのゲームに流れていく、お金を使わない人たちがメインであるように推測されます。個人的には、MMORPGという、いわばニコニコ動画のライバル的サービスの広告がベタベタ貼ってあるのはとても違和感を感じてしまいます。

 いっそ有料会員の画面からバナー広告を取っ払うことはできないんですかね。930万人中の20万人。2%ちょっとですよ。バナー単価への影響なんて微々たるもんじゃないですか。正比例するとしても1億円売り上げて200万円くらい?それでバナー広告がなくなるならお金を払ってもいいと思ってくれる人もいるかもしれない。レイアウトがすっきりすれば機能性も向上するわけで、それは大きなインセンティブになると思うんですけどね。

 ニコニコポイントにしても、それを積極的に購入しようとするのは現状既にニコニコ動画にお金を払う意思がある20万人の人たちなわけで、残りの910万人はよほどの強い動機がない限りはわざわざ使い回しのしにくいプリペイドポイントなんて購入しないのではないかな。ニコニコ動画が魅力的な動画コンテンツを集め、またインターフェースの面で他のサービスよりも優位である限り、放っておいても無料会員は増えていくんですよ。であるならば、運営しているドワンゴニワンゴがするべきは現状の有料会員である20万人が500円払って良かった/もっと払ってもいいと思えるようなサービスを開発することなんじゃないんですかね。

提案いくつか

 これだけだと単に愚痴なので、いくつか具体的な提案をしておきます。

  • ケータイ向け有料サービスを拡充する

 一応現状でも申し訳程度の特権*1がありますが、はっきりいって魅力に乏しいです。例えばアプリを立ち上げた状態でマイリストの登録・閲覧ができる、タグ検索が出来る、再生後におすすめ動画が表示されるあたりは欲しいところ。動画をローカルに保存して視聴できたり出来たりしたらそれだけで別料金払ってもいいですね*2。その上で、PCのプレミアム機能はいらないがモバイルのプレミアム機能が欲しいという人向けに315円とかでケータイ限定のプレミアム権を販売するというのも一つの手かも知れません。

  • 動画の新作投稿通知

 特定のタグや特定の動画投稿者の新作投稿があった時にメールやニコニコのマイページ等に通知してくれる機能なんかもあったりすると非常に重宝しますね。現状、特定作者の新作の情報はマイリストのRSS登録やTwitterのタイムラインで対応しているのですが、マイリストがない場合もあり、なんらかの対応があればありがたいなあと常々思っています。特に定期的にアップされる公式動画の更新を知る手段が実際にそのページを開いて確かめるしかないというのは、正直どうかと思うんですけどね。積極的に動画を見たい人が1クリックで動画に辿り着ける手段を用意してもよいんじゃないんでしょうか。

  • プレミアム専用ランキング

 プレミアム会員のデータのみを使用したランキングなんてのがあっても面白いかも知れませんね。母集団が小さくなるので総合のランキングでは出てこない埋もれた名作が浮上しやすくなるかもしれませんし、本気で工作応援しようと思ったらその分アカウントを買う必要も出てきて、運営的にもウハウハかも?あるいは少額の課金でオススメ印を付けられるようなサービスがあってもよいかもしれませんね。

 これは以前にも提案したんですが。現状ニコニコ生放送はプレミアム会員が優先入場出来るなどしていますが、まあそれでも他事をしていて入り損なったり、途中退出する羽目になって再入場できなかったりとかそうゆう状況には対応できないんですよねえ。ならばいっそ事前に優良でアリーナ席とか銘打ってチケットを有料販売してしまえばよいんじゃないかと思うんですよね。お金を払わない人は現状通り入場のタイミングを見計らって突撃してもらう。お金を払った人には入退場自由の特別枠を用意する。課金はニコニコポイントで行えば、ほとんど何の手間もなく実現できると思うのですが。イベントにもよりますが500円〜1000円くらいなら払う人は多いと思いますよ。

 とりあえず軽く思いつくあたりで。考えればもっといくらでも出てくると思うんですけどね。ともかく、誰がお金を払うのかというのをもっとよく見て欲しいなと。広告を提供してくれる企業のほうばかり見てていつの間にか利用者にそっぽ向かれてたんじゃ悲しすぎますからね。びっくりするような面白いサービスが出てくることを祈っています。

*1:40分以上の動画も見れる/横画面再生できる

*2:著作権上問題が生ずる可能性はあるが