アイテム課金MMOはシステムの死を織り込んでいるのかもしれない

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 死なないシステム、持続可能なエコシステムを備えたMMOゲームというのは、ゲーム好きの一つの夢で、私も昔からいろいろと夢想してきたりしていました。だけど、そうゆう方向性を目指すゲームって意外なくらい少ないんですよね。

ゲーマーの夢と、企業の現実

 世界初のMMORPGウルティマオンラインが登場して10年。以来年々その数は増し、その大半が2〜3年でサービスを終了しているにも関わらず、今も毎年数十ものタイトルがリリースされています。傍から見ているとバタバタとサービスが終了しているように見えるのに、新規参入が途絶えない。これはつまり、今のモデルで利益が出ていると言う事なんでしょう。

「FGHファミ通ゲーム白書2008」内容を立ち読み「2007年のオンラインゲームのトレンドとトピックス」

アイテム課金という禁断の果実

 上は、ファミ通ゲーム白書2008の抜粋記事。オンラインゲームの現況分析です。2006年を境にアイテム課金タイプのサービスが激増し、今や新規サービスのほとんどが基本無料アイテム課金タイプになっている。このモデルの最大の旨みは課金ユーザー一人あたりの売上高が非常に高い事。定額課金の場合のおよそ5倍の金額を一人あたり使っている。もっとも、このデータでは会員全体の何割が課金しているのかはわかりませんが、仮に1割が課金をするとして、定額課金型の2倍以上の集客が見込めるのなら基本無料で増収が見込める。無料MMOの広告バナーをあちこちで見かけるのは、つまりそうゆう事なんでしょうね。

 このアイテム課金、初期に成功したパンヤハンゲーム等は主にアバターの衣装等を有料で購入するというシステムだったのですが、最近は経験値や回復アイテム、またレアアイテムが入った景品クジといった、形の残らない消えモノに課金をするタイトルが増えているんですね。ゲームを有利に進めるために少し投資したつもりが、自覚のままいつのまにか大金をつぎ込んでいるようなシステムになっている。しかも継続して有料アイテムを買わないと快適なプレイが望めないものまであったりするみたいですね。で、おそらくこういったゲームは、すぐに飽きられる。

過疎化、閉鎖、そして新サービス

 新しいMMOタイトルがリリースされて、まだ世界が新鮮で活気のあるうちに、積極的なプレイヤーがより有利にゲームを進めるために、有料アイテムに手を出していく。次第にゲーム内ヒエラルキーが固定的になり、システムが動脈硬化を起こして、プレイヤーが離れていく。サービス開始から1年もたたないうちに過疎化が進行してゲームとして成立しなくなってくる。そうなれば、サービス停止もやむなしということで、2年と待たずに閉鎖される。でも、この間のアイテム課金の売り上げだけで、開発会社は十分儲かってるんですよね。そして新規に立ち上げたゲームで同じことを繰り返し…というところまでは、まだ今のところなっていませんが、そうゆう思惑が見え隠れしないでもないんですよね。

アイテム課金MMOはバブルなのか

 はたから見ているとマッチポンプというか、こんなことをやってたらあっという間にユーザーが離れるぞ、と思うんですが、実際に遊んでいる人たちは意外とそれほどへこたれていないというか、ひとつのサービスに飽きたらすぐに次のサービスに乗り換えて、そこでもアイテム課金で散在していたりするようですね。ひとつのゲームをずっと楽しみたい、一人のキャラをずっと大切にしたいと思うプレイヤーには酷ですが、MMOゲームの大勢は、そういった熱しやすく醒めやすい人たちをメインの顧客としてとらえているんじゃないんですかね。いずれバブルのようにボンとはじけて見向きもされなくなるという可能性はありますが、利益が出続ける限りは、アイテム課金タイプの、システム寿命の短いゲームこそが、MMOゲームの主流になっていくのは間違いのないところです。

持続性の高いMMOの可能性

 じゃあへだちさんが提唱するような、持続性の高いMMOゲームは実現の見込みがないのか、というと実はそうでもないんじゃないかな、とも思うんですよね。上に書いたように、アイテム課金型ゲームを愛好する人たちは、ゲームの乗り換えという形で軽々とキャラクターの死を受け入れて、プレイをしている。もし彼らの望むゲームを提供できるのであれば、持続可能で高収益のサービスというのも、可能性としては、考えられる。と、ここまで考えたところで実は生まれ変わるべきはゲーム内のキャラクターではなく、世界そのものなのかも。なんてことも思ったり。キャラクターは継続されるけど、定期的に世界が激変して、ルールが全部ひっくり返っちゃうようなゲーム。やってみたら、案外面白いかもしれませんね。