川上から川下まで押さえるプロダクションIGの戦略

http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090411/p1
 東のエデンものすごく楽しみにしています。私の住んでいる地域でもまだ未放映なのですが、放映が待ちきれない思いです。ところで、この原作付かオリジナルか、という話題は以前からペトロニウスさんや井汲さんと継続的に話していたりするのですが、私は原作付アニメというものには全く否定的ではありません。個人的な体験を言えば、ここ数年でアニメに対する興味が戻ってきたのは「ハチミツとクローバー」と「プラネテス」という2つの原作付アニメのおかげですし、オリジナル企画でも箸にも棒にもかからないような駄作もまた沢山あるのは言うまでもないことですね。

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 「志」と言ってしまえばそれだけの話なのですが、いったいこの、肌触り、空気感からして格が違う、傑作の風格を伴ったアニメ作品というのはその他の作品と比していったい何が違うのか。それは作りたいものを作りたいように作る、その為にはいかなるリスクも厭わないという覚悟なんですよね。アニメ制作現場の現実というのは妥協に次ぐ妥協が当たり前で、作り手が最初に目指した形をそのまま具現化出来ることは希です。原作の縛りというのもその妥協の一要素に過ぎなくて、障害は他にも無数にある。逆に原作付であっても原作のエッセンスを極限まで追求して、自分のものにしてしまえばまごう事なき傑作が生まれることもある。アニメ作品ではないですが、例えば、二次創作の傑作の代名詞ともいえるこの作品とかですね。

プロダクションIGが目指すもの

 さて、枕はこれくらいにして本題です。最近少し調べ物をしていてプロダクションIGのIR情報などを読んでいたのですが、最新の2009年5月期中間決算資料になかなか興味深い部分があったので少し紹介してみようかと思います。

IG Port | 説明会資料
2009年5月期 中間決算説明会 資料(PDF)



 昨年、マンガ専門出版社マッグガーデン経営統合した件に関して、その経緯と目論見についての説明となっているんですが、アニメの制作下請け会社として出発したプロダクションIGが、アニメの原作権から商品化権までまさに川上から川下まですべての権利を自社で持つことで、経営基盤を固めることを目指してるんですね。これはIR資料ですので経営の視点になりますが、上から下まで押さえることは、収入の極大化だけでなく、制作物の自由度の保証にもなるんですよね。

 加えて、IGはこの10年間で着実に資産を蓄え、現預金23億円を含む流動資産47億円、借入金は経営統合したマッグガーデンの3億円のみという超健全経営なんですね。何となれば自社だけでアニメーション制作費のすべてを賄える。だから共同出資者からの余計な横槍を心配する必要もない。そしてこれまで積み上げてきた実績によって、そもそも横槍を入れる必要がない信用も得ているんですね。

 そんなプロダクションIGが、まさに持てる力のすべてを注ぎ込んで企画した作品が「東のエデン」なんですよね。これが、面白くならないわけがない。既に放映された地域では絶賛を持って迎えられていますが、この11日間、11話の物語と、その後日譚としての劇場版を堪能できる日が本当に楽しみでたまりません。