玩具メーカー主導のアニメビジネスについて考えてみた
玩具メーカー主導のケース
玩具メーカー主導のアニメというのは古式ゆかしい伝統的な制作スタイルですね。予算規模8億円で4クール48話、玩具を主題にしたアニメを準キー局のネットワークで全国放送するというパターンを想定してみます。出資内訳は以下の通り。
玩具メーカーG 3億5千万円
テレビ局H 2億円
広告代理店I 2億円
制作元請J 5千万円
- 玩具メーカーの場合
玩具メーカーがテレビアニメと連動で企画を起こす場合、基本的には数十億規模の商いを想定していると思われます。単価100円の商品なら1千万個以上。途方もない数字に思えますが、今放送中のものだと例えば、角川とバンダイが組んで仕掛けているバトルスピリッツなどは、1年間で1億枚(売上換算で20億円以上?)出荷しているみたいですね。その他にも衣料品や食品、生活用品へのキャラクター使用料等での収入も見込めますが、基本的にはメインの玩具の売上でペイするモデルですね。
- テレビ局の場合
さて、テレビ局がどうやって投資を回収するかといえば、これはぶっちゃけていえば波代ですね。2億円出資して、そこから1億5000万円くらいが電波使用料として戻ってくる。残りの5000万円を印税収入と放映権料の販売で賄うという形でしょうね。テレビ局としては自ら出資するよりも波代だけ出してくれるお大尽なスポンサーが獲得出来ればそれに越したことはないのですが、どうしても売れ残ってしまう枠を埋める必要がある。そこに自社制作の情報バラエティをあてるくらいなら、波代を相殺するかわりに権利を取ると言う形で出資するわけですね。この手法であれば放映権料そのものは安売りしなくてすむ(他の枠との兼ね合いを気にしなくて良い)というメリットもあるんじゃないんですかね。
- 広告代理店の場合
広告代理店の場合はもっとざっくりとした話で、基本的に2億出資したら2億円がそっくり戻ってくるんじゃないかと。権利だけ取るということですね。実際のお金の流れはもっと複雑でわかりにくくなってるんじゃないかとは思うんですが、売るものがない代理店が投資を回収するとしたらこの仕組みしか考えられないんですね。じゃあ何の権限があって権利を取っているかと言えば、制作前の企画段階でのマーケティングや販路の確保等々で代理店の仕事がある。これこれこういう規模での商いになりますので儲かりますよ、つきましては印税収入の25%を戴きたい。みたいな話なんじゃないかなと。このあたりの数字のマジックが、端から見ていて予算の中抜きをして何もしていないように見えるんではないかな、などと考えています。
- 制作元請の場合
制作元請もまた、予算の中から制作企画費としていくらか抜くことになる。4クール規模の作品だと2000万円くらいですかね。これにプラスして映像化権を取った場合は、それをビデオメーカーに2000万円なり3000万円なりで売ることで投資を回収するのが基本的な商売でしょう。国内市場だけではトントンですが、海外に販路拡大できれば大きく儲かるわけですね。ちなみに2000万円で映像化権を売った場合、卸値2500円(定価4000円)のDVDを4万枚程度出荷すれば元を取れる計算です。4話入り12巻で販売しても、各巻3000本ちょっとの出荷でペイする。キッズアニメが安い道理ですね。
出資しない場合は制作企画費の2000万円を丸々受け取るわけで、場合によっては出資しないほうが儲けが大きいこともあるでしょうね。玩具の印税は3〜5%くらいが相場ですので、1/16の出資では例え玩具の売上が20億円あったとしても600万円くらいの収入にしかなりませんので。
- 制作費内訳
ということで制作費の内訳を整理してみましょう。
放映権料 1億5千万円
企画協力費 2億円
企画制作費 2千万円
実制作費 4億3千万円(1話あたり900万円)
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計 8億円
こんな感じで予算の半分くらいが中抜きされているように見える構図が出来上がるのではないかと。実際は放送局や広告代理店は権利を取るために予算を計上しているだけで、制作に当てられるはずのお金が消えている訳ではないんですよね。特に広告代理店への支払いは、ここが大きくなろうと小さくなろうと権利の配分が変わるだけで制作費はまったく変わらないんじゃないかと見ています。
このモデルでは結局、制作規模にダイレクトに関わるのは玩具メーカーの出資金のみと言うことになるわけですね。なので前半の商戦で予想以上の売上が上がれば後半の予算の積み増しということはあり得ますし、逆に玩具の売れ行きが悪ければ予算削減→打ち切りという憂き目にあうわけです。この場合DVDの売上は制作費にほとんどなんの影響も与えないというのも重要な点ですね。元請の利益にはなるでしょうから無意味ではないとは思いますが。