「敵の補給艦を叩け!」を読む
手早く第3話の話もしちゃいましょう。シャアとの本格的な戦闘が行われる第3話「敵の補給艦を叩け」。戦闘シーンも抜群に面白いのですが、前半の戦闘に至るまでの意思決定手順にも注目したいところですね。
まずは、ドズルに補給を渋られるシャア側から。ドズルの「十分な戦力で戦える昔とは違うんだぞ」という台詞がなかなか深い。ザクという戦力を持って戦局を優位に進めていたジオン軍が、この時点ですでにジリ貧になりつつあるんですよね。ガンダムという超兵器の登場を待たずして既にジオン軍の優位が失われつつある。このあたりの描写は、ジオンが新型モビルスーツを開発する理由をさりげなく含みを持たせてあるんでしょうね。
あくまで民主的な手続きを踏んだ上ですが、ブライトが、互いの戦力が未知数な中で、機先を制するという判断の良さを見せているのがよいですね。「戦闘可能な方は至急ブリッジに集合してください」という呼びかけもいい。この時点で闘う意思がまったくない民間人はふるい落とされるわけですから。第2話で軟弱者呼ばわりされたカイが、何気にこの呼びかけに応じているのも、ちょっと良いところですね。
ここで大人たちは慎重策をとり、若者たちは血気盛んに戦いを望むという対比をとっているんですが、よく見るとアムロの後ろに立っているおじさんが戦闘に賛成してるんですよねえ。これって単純に作画ミス、なのかな(笑)。
戦闘に入ったところで、リュウとアムロの戦闘センスの差をこれでもかと見せつけてくるのも良いですよねえ。正規の訓練を受けたパイロット候補生のリュウよりも、昨日今日ガンダムに乗ったアムロのほうが、戦い方を分かっているという。戦闘の素人が兵器の能力差で辛勝するという構図がこの「敵の補給艦を叩け」の基本構成なのですが、その中でもアムロやブライトの戦術勘の良さを忍ばせているというのが奥の深いところです。
この才能の差に、表立って劣等感を見せないリュウは実際大した人物だなとは思いますが、こういった才能の差をまざまざと見せつけられたことが、後々の彼の行動の説得力になっていくんでしょうね。
戦いを通じて、少年たちが戦士の顔つきになっていく中で、ジオンの兵士たちがいとも簡単に命を散らしていく描写を、なんの感傷もなく描いているのも、改めて語るまでもないですが見逃してはいけないポイントですね。アムロやシャアが華々しい戦果を上げる中で名もなき兵士たちはなすすべもなく死んでいく。戦争のリアルを描くガンダムの面目はそこにこそあるのですから。