「大気圏突入」を読む

 さて本日の毎日ガンダムは第5話「大気圏突入」。テレビシリーズ屈指の作画残念回なのですが、このエピソードものすごく好きなんですよねー。まず大気圏突入中の戦闘というシチュエーション自体が素晴らしい。分刻みで進行するスケジュールが嫌が応にも緊迫感を高めます。そんな中で、大気圏突入中の戦闘という古今例のない作戦を、新兵相手に無茶ぶりするシャア少佐がひどすぎです。これで後になって実は失敗前提の二段構えの作戦だったことが語られ「戦いは非情さ」などと宣う姿には、思わず大人ってやつは!と憤らずにはいられませんね。

 そのシャアを迎撃するために発進するアムロに対して「あなたなら出来るわ」とかいうセイラさんもかなり非情です。4分で戻ってきてと言って了解を取り付けた後、敵はザク4機とか言われたらどう答えればいいのやら。さすが兄妹といったところでしょうか。

 緊迫する事態のなかで、敵味方双方ともイレギュラー連発で、どこもかしこもまるで作戦通り上手く回らないところも素晴らしい。ミサイルの撃ちかたがわからない機銃も撃ったこともないバルカンの照準はずれるわ支給された武器がハンマーだわとさんざんです。

 合間に挟まれるリード艦長と部下のやりとりも、妙にコミカルに描かれてますが、本人たちにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際なんですよね。無様に見えて、怪我よりも空気漏れの対処が先だとか、指示自体はちゃんと的確。ただまあこの人は横柄で一言多いタイプなんであまり部下からは慕われないでしょうね(笑)。

 よくネタとして取りざたされる耐熱フィルムですが、真面目に考証すると案外それほど的外れでもない描写だという話もありますね。突入角度にもよるでしょうがものの数分持てばいいわけですから、熱容積の高い使い捨てのフィルムというのは生存率を高める為の緊急用装備としてはアリだと個人的には思いますね。むしろ映画版の大がかりな冷却機構のほうが用途の狭さを考えると微妙だなーなどと思わなくもなかったり。

 このエピソードで特に好きなのはやはり、熱圏を抜けたあとの、地球へと降り立った感動が伝わってくる一連のシーンですね。絶望的な状況から生還したガンダムの雄姿、眼前に広がる雄大な地上の風景。かつて地球で生まれ、その土地を離れなければならなかった老人たちの言葉にならない表情。何の予備知識がなくても、死線をくぐり抜けたのだということが伝わってくる。

 
 かくしてサイド7脱出からの非常の時間は終わり、ここからは戦争の日常が描かれることになります。人間ドラマとしてのガンダムが本領を発揮するのはいよいよこれから。とても楽しみですね。