「ガルマ、散る」を読む

 第10話「ガルマ散る」。冒頭、汗と埃にまみれた戦場から一転、華やかな社交パーティーのシーンから始まります。ここで登場するのがガルマの恋人、イセリナエッシェンバッハなのですが、この女性のことって以前はなんだかよく分からなかったんですよね。それが改めて見返して見ると、なるほどこの時点では、戦争というものにまったく実感を持っていない箱入りのお嬢様、ガルマへの恋心も、どちらかと言えば父親への反抗心が強くって、恋する自分に酔っているだけの人だったんですね。それがガルマの死をきっかけにあのように変わる訳ですが、それは次回解説しましょう。


 リード中尉が退艦し、やおら生き生きと指揮を始めたブライトさんがガルマ率いる追撃部隊に反転攻勢を仕掛けるわけですが、このブライトの奇策をシャアがいちいち読んでいる描写を挟み込むのが面白いですね。「味方まで騙すというのはどうも気が引ける」などと嘯いてますが、地形図を見た段階でおおよそどんな罠を仕掛ける気かまで読み切ってるんですよねえ。

 そして何度も反復されたガルマ抹殺をついにやり遂げる訳ですが、まだガルマが息のあるうちにちょっと喋りすぎ何じゃないかとも思わなくもなかったですね。万が一ガルマが脱出して生き残ったらどうするつもりだったんでしょう。まあガルマの性格まで読み切ってのことなのかも知れませんが、冷静に考えると通信記録とか残ってそうだなーなどと思わなくもなく。とまれ、シャアの望みが仇討ちであり、その相手がジオンの頭目デギン・ザビであることがついに明かされるわけで、その納得感に細かい話はまあ良いか、となるわけですが。