「イセリナ、恋のあと」を読む

 第11話「イセリナ、恋のあと」。このエピソードは劇場版ではバッサリとカットされてしまっていて、他の単発エピソードと比べてもあまり目立たなかったりするのですが、改めて見返すととても濃い。やはり圧巻はイセリナの変化でしょう。

 登場シーンで表情を隠す定番演出。振り返ったイセリナの毅然とした表情にたじろぐダロタ中尉のリアクションが良い。泣きわめくのでもなく、無言でガルマの生活の後を見つめるその眼差しは、前回までの恋に恋する少女の面影のない、強い意志を持った女性の表情なんですね。この時イセリナは何を思っていたのか。戦争というものをどこか遠い世界の出来事だと思っていたお嬢様が、ガルマの死をきっかけに、実際にガルマがどんな世界で生きていたのかということに視線が行っているんですね。ガルマのことを見ていたつもりが、何にもガルマのことを知らなかったイセリナ。それゆえに、その自分の想いを本物にするために戦場に立つことを決意するという。この、一連のシーンに込められた情念の濃さにはともかく圧倒されます。

 ガウ3機で出撃するイセリナたちですが、この作戦って凄く不自然で、実質的にダロタ中尉の独断で動いてたのかな、なんて思いますね。おそらくは将兵たちもガルマへの忠誠心で動いたのでしょうが、用兵がいかにも場当たりで、なんら戦略的意図を感じなかったりするあたり、深読みすると面白そうです。それにしてもルッグン1機でホワイトベースを航行不能にするシャアさん、半端ねえっす(笑)。ここでも基本的にはホワイトベースを奪うというのがジオン側の戦略の基本になっているのも注目ですね。

 まったくどうでもいい話ですが、不時着する時のこのミライさんの表情がかわいい。

 ジオンの内幕については今さら言うこともほとんどないのですが、実務的にちゃんと地に足のついた発言をするキシリアに対し、ギレンはやっぱり浮世離れしているというか、どこか遠いところを見てる感がでてるのがよいですね。