「テキサスの攻防」を読む

 丸ごと一本マ・クベの為に用意されたかのようなエピソード。何故ここでマ・クベ?と思わなくもないけど、おそらくは元々のプロットであればもっと見せ場があったキャラなんだろうとは思う。アムロガンダムと対峙して生き延びて再戦を果たしたのは、シャアを除けば、マ・クベだけだ。戦士の意地を笑い、狡猾に立ち回り生き延びてきた彼が、シャアへの対抗心でやらなくてもいい対決をして死んでいくというのはなかなか皮肉めいた話でもあることだなあ。シャアさえそこで見ていなければ、きっと落ちのびただろうと考えると尚更。

 善戦するマを見て「ガンダムがかたをつけてくれればありがたいと思っていたが」と語るシャアはマ以上に狡猾で、しかも鈍い男として描かれている。共鳴するアムロとララアに気付きもしないし、ララアの言葉の真意にも思いを馳せない。それを見てララアが寂しく思うのはある種当然の成り行きだろう。それにしても実はここに来ても作中でまだただの一度も「ニュータイプ」という語は出てこない。初見のつもりで見ると、この不思議な少女ララアとアムロにどのようなドラマが待ち受けているのかまったく予想がつかないですね。

 ホワイトベースのメインクルーのそれぞれの物語もセイラを除いて概ねかたがつき、いよいよ物語は主人公アムロへと収束していく、その予感に気分が高まりますね。