東のエデンと直列民主制

 批評家の東浩紀さんが朝まで生テレビに出演、SNS直接民主制なるものを提唱して話題になっていますね。

「ネットがあれば政治家いらない」 東浩紀「SNS直接民主制」提案 : J-CASTニュース

 記事のタイトルはJ-CASTニュースなので割り引いて読むとして、ネットを活用することで政治の在り方、議会の在り方にもっと直接民意が反映されるような仕組みを考えるべきではないかという提言と受け取りました。番組は見てないのですがなかなか刺激されるところがあったので、オタクはオタクらしくアニメを肴にしてちょっと語ってみたいかなと。

「国民が政策にじかに介入できるようにちゃんとシステムを作って、政策審議過程を全部透明化し、パブリックコメントのシステムをもっと洗練された形にすることによって、全然違う政策の作り方ができるかもしれない。たとえば基礎自治体(市町村)のいくつかなんて、SNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)で運営すればいいと思う。ミクシイとかで」

 およそ言葉が足りてないとは推測しますが、おそらくこのあたりが肝でしょうね。審議過程の透明化というのは、ここ最近の各種審議会をTsudaる流れの延長線上にあるものでしょうね。審議会のや委員会の様子をTwitter等でリアルタイムで中継することで今まで見えなかったものがたくさん見えるようになってきた。その次に来るのはTwitterでのレスポンスを直接引用して討論の場に持ち込むといった形になるんじゃないかなと。あくまでその場で討論をするのは代表者なんだけど、その背後にブレーンとして機能する集合知が存在する…そんなイメージを持ちました。

 で、このイメージが何かに似てるなと思ったんですが、アニメ「東のエデン」のクライマックスで主人公の滝沢くんが2万人のニートに呼びかけてミサイル迎撃アイデアを募り、その中から人工知能Juizが最適解を抽出する、あのシーンを連想したんですね。



 “あいつら直列に繋げば凄い力を発揮するんだ”とは作中の中での台詞ですが、めいめいが無責任に好き勝手なことを書き込んでも、その中から有効な意見を抽出してまとめられる人がいればそれは優秀な人が少数で考えているよりもより良いものになりうる。問題はその有効な意見はどうやって抽出するの?という話でもあって、Juizのようなテクノロジーのない現実ではそれは難しいのではないか、とも思われますが、例えばTwitterのRTのような仕組みで注目に値する発言が自然増殖して浮かび上がってくるような現象はあり得そうですね。この、一般市民が代表者の背後に直接連なって、政治に介入可能なモデルを、アニメの台詞に倣って直接民主制ならぬ直列民主制と呼んでみるのも面白いかも知れません。

 議会や委員会がネットを通じてより広く外に開かれ、その場で行われる議論へと直接介入し得るようになればそれは政治の在り方の大きな転換点になり得るでしょう。ただ、このモデルでは政治家の役割は軽くなるどころかむしろより煩雑で特殊な才能を要するものになってしまうかもしれません。その点からしてもたぶん東さんの考えているモデルとは違うでしょうね。

 「東のエデン」の劇場版は、おそらくはこの集合知を背景とした滝沢朗の楽園統治<>とその限界<>が描かれるんじゃないかななんてことを妄想していたりもします。

「みんなの意見」は案外正しい
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