はちゅねミクとニコニコ技術部のおかしな関係
id:chintaro3さんが、最近初音ミクブームの歴史の掘り下げをやっていて、とても興味深く読んでいます。
初音ミク界隈で理解されてないこと - しんたろサンの日記
VOCALOIDの話 つづき - しんたろサンの日記
VOCALOIDの話 つづきのつづき。 - しんたろサンの日記
余談 ニコニコ技術部の「はちゅねミク」 - しんたろサンの日記
ニコニコ技術部の歴史についてはいつか書かなきゃいけないなと思いつつ、棚上げにしてしまっていたのですが、この機会にざっとまとめて見ようかなと。
よく知られている、ニコニコ技術部の発祥の地と言われるのはこの動画ですね。
はちゅねミクのネギ振りを再現してみた…という謳い文句ですが、まあ見て分かる通りの一発ネタですねw。特に高い技術を用いているわけでもなく、まさに発想の勝利というヤツです。この動画をきっかけに、はちゅねミク(及び初音ミク)にいろんなガジェットを使ってネギを振らせてみるという動画の一群が流行したのが、技術部の最初の発端ですね。この当時はまだニコニコ技術部というタグではなくVocaloid技術部というタグが流通していたように記憶しています。もはや全て上書きされて痕跡も残ってないのですが。
「たぴ・ぱん」の誕生
はちゅねミクと言えば言わずと知れたIevan Polkkaなのですが、あまり語られる事の少ない、はちゅねの名をニコ厨に知らしめたもう一つの重要な動画があります。それが「たぴ・ぱん」。当時既にMAD素材として定番になっていたキーボードクラッシャー(KBC)と、ふたりのもじぴったんミクバージョンをマッシュアップした、通称ミクラッシャー。その楽曲に併せて、3Dモデル化されたはちゅねが奇行を繰り返すこの動画は当時爆発的な人気を得て、はちゅねのイメージの形成に大きな役割を果たしたように思っています。この当時、本家のミクはオリジナル曲が次々とヒットを飛ばす歌姫路線のまっただ中にあり、ブームの当初にあったおバカな子というイメージが分離されてはちゅねに定着していったのか、これ以降、ネタ的にミクを扱う場合ははちゅねを用いるのが一つのセオリーになっていったように思います。
ところで、たぴ・ぱんの最後でもぐらがロケット噴射で宇宙へ旅立ち、衛星軌道に乗るというオチになっているんですよね。更に続編のZぴた・ぱんでははちゅね自身が宇宙へ飛び立ち月面へ降り立っていたりします。その後の技術部の展開を考えるとなかなか象徴的ですらありますね。
ネギ振り高速化とARミク
この流れの中でひとつの決定版となったのがこの動画シリーズ。一見HDDの無駄遣いネタに見せかけて、その実確かな技術的な裏打ちを持って高速ネギ振りを実現しているという、まさに今の技術部に通じる動画です。
そしてもう一つ決定打となったのが、同じく07年11月に登場したARミク。瞬く間に派生動画を大量発生させたこの動画群でAR技術を知ったという人は多いのではないのでしょうか。かく言う私自身もそうだったりするのですがw。このAR技術は当然ミクとは直接の関係はないのですが、ニコニコ動画上ではしばらくの間ほとんどがミクを使った動画で占められていたため、ボカロとの親和性がとても高くなっているんですね。そしてこの、3Dミクを歌ったり踊らせたりするという需要が、次の大きなムーブメントの呼び水となります。
人気の「ARToolKit」動画 355本 - ニコニコ動画
ARToolKitとは (エーアールツールキットとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
MikuMikuDanceの衝撃
はちゅねのネギ振りをモチーフにしたガジェット群とARデモによって勢力を急速に拡大したVocaloid技術部タグがカオス化したボカロ界隈で大きな存在感を示していた08年初頭。とてつもないツールが誕生しました。言わずと知れた、MMD、MikuMikuDanceですね。今やボカロ界隈に留まらないCGMの1大メッカとなったこのツールの登場のインパクトというのは本当に凄かった。その後の勢いは改めて語るまでもないですが、爆発的に広がっていった背景には、音楽制作は出来ないし絵も描けないけど界隈に何か貢献したいという人にとってまさにうってつけのツールだったということなんでしょうね。
Vocaloid技術部からニコニコ技術部へ
今あるニコニコ技術部タグを投稿順に追っていくと、MMDの登場に前後して、技術部タグ中のミクネタの割合が目に見えて減っているのが分かります。ミクを支援したい、という人たちの何割かはMMDへと移行して、技術部タグを使う人たちが根っからの工作好きの割合が多くなった結果なんじゃないかと推測します。このあたりでVocaloid技術部というタグはほとんど姿を消し、電子工作関係の動画はニコニコ技術部タグが付けられるようになっていったように記憶しています。尻PことSF作家の野尻抱介さんらが中心になって、製作者同士の横の繋がりが強くなっていくのもこの時期でしょうね。尻P、不在通知P、 akira_you氏らが、08年5月に開催された技術系の祭典「Make Tokyo」にニコニコ技術部名義で参加したというのも大きなトピックでしたね。
小型化戦争、あの楽器プロジェクト、そしてHAXAへ
ここから先はニコニコ大百科やニコニコ技術部まとめWikiを参照して貰った方が早い気もしますが、簡単にまとめましょう。その次に大きなブームとなったのは08 年6月のこの動画に端を発するはちゅね小型化戦争ですね。4cmから始まって最終的に110ミクロンまで到達したこの技術競争は、技術部の結束を高め、はちゅねのプレゼンスを再び高めるのに大きな役割を果たしたムーブメントでした。ミクブームの初期にネギ振りガジェットを作っていた人たちが再び技術部へコミットし始めたきっかけにもなったんじゃないかなと思います。
小型化戦争のブームによって、はちゅねが技術部のシンボルとしてほぼ認知されるようになったものの、実際のところ技術部タグのほとんどがミクとは関係のない動画だったりしますね。ただし、はちゅねあるいは初音ミクというキャラクターを軸にすることで時折大きなムーブメントが起きる、それ故にミク=技術部というイメージがよりいっそう強くなっていくというところはあります。その結実点のひとつが「あの楽器」プロジェクトですね。
2008年末に投稿された3DPV に登場する謎の楽器。これを技術部で実現して!というお願いに俄然やる気を発揮した技術部の面々が様々なアイデアを投入し実現に向けてミーティングを繰り返すという大きな現象に発展したのは記憶に新しいところです。当初ほどの勢いはないものの、今も着実にプロジェクトは進行しているみたいですね。
そして2009年に入ってからの大きな出来事と言えばプロジェクトHAXA。小型化戦争の口火を切った超電磁Pが、自作ロケットではちゅねを宇宙へ送ろうと試行錯誤する動画シリーズが発端となったこのプロジェクトは尻P主催のSOMESATへと引き継がれ、今話題の金星探査衛星あかつきにミクを乗せよう!という話に繋がっていくわけですね。
はちゅね宇宙航空研究開発機構(HAXA)とは (ハチュネウチュウコウクウケンキュウカイハツキコウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ソーシャル・メディア衛星開発プロジェクトSOMESATとは (ソーシャルメディアエイセイカイハツプロジェクトサムサットとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
こうして技術部とはちゅねの歴史を追っていくと必ずしも技術部=はちゅねミク(初音ミク)というわけではないのだけれども、要所要所の団結のシンボルとしてミクやはちゅねが大きな役割を果たしてきたんですね。それは偶然と言えば偶然でしかないのだけれども、ミクという、そのまま未来に由来する名前を関したキャラクターと、合成音声ソフトという科学技術の申し子ともいえる出自を考えれば必然でもありますね。