蔑称が自称に変わる理由
先日のエントリのid:thvenrさんのブクマコメントにピンと来たので。
「オタクもニコ厨も初めは他称(蔑称)だったわけで、クラスタの中の人の自称が定着するのかな?という疑問がある」
確かに何故か、マイナーな属性を示す自称って蔑称が元になっていることが多いですよね。オタク以前の言葉でも、○○バカ、○○キチなんて言い回しがありますが、これなんかもあからさまに蔑称ですよね。偉大な漫画作品のお陰か、ネガティブな印象を持つ人はほとんどいないでしょうけど。
こういった蔑称が自称として定着するのは日本の謙譲の精神の伝統なのかも知れないけれど、表明しても外部から無用の反発を受けないという自衛の側面と、もうひとつ、自嘲的に語ることで仲間探しをしやすかったという側面があるのかな、なんて考えたりします。
特にいわゆるオタク的な、個人の活動に根差した趣味嗜好なんかは、居丈高に存在を主張してもかえって人を遠ざけてしまう。そんな屈折した経験から自虐的な自称を選択するようなところもあるように思います。
この一方で、同じマイノリティでも土地に根差した強い繋がりを持つ、いわゆるヤンキー文化なんかは、もっと屈託なく自身の所属を表明したりしますね。
このあたりのことを考えると、ニコニコの文化というのはわりとヤンキー文化に近いノリがあるような気がしないでもないです。そもそもニコ厨という語は最初こそ侮蔑的に使われていたかも知れませんがその期間はごく短く、気がつけば圧倒的多数が自称として使っていて、侮蔑を込めて使う人がいても柳に風で聞き流すような状況なんですよね。このあたりはいったん蔑称として世間に認知されてから一回りして自称として用いられるようになったオタクとは大きく異なる点です。
このあたりは、仲間探しのツールとして機能していたオタク等の語と同様の出自を持ちながら、ニコニコ動画という人の集まる土地を持つが故にその機能が重視されず、どちらかというと仲間であることを確認するためのツールになっているニコ厨という語の面白さかなとも思います。
そう考えると土地の中に入って来ない人、外部から観察しているだけの人の共感は得られないのかも知れないななどとも思ってしまったり。
中にどっぷり漬かってる身としては、こっちは楽しいよ、みんなはやくおいでよ、としか言いようがないんですけどね。