いっそゲーム実況を有料化出来ないものか

 ニコニコ動画に投稿されたノベルゲームのプレイ動画を巡って法的な対応を表明したメーカーが現われ物議を醸しています。

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 私は、メーカーの言い分はまったく正当なものだと思っています。良い悪い以前の問題として、著作者はその著作物の二次利用について諾否する権利があります。単に割に合わないからといった理由でその権利を放棄する理由は何もない。対話が成立していない以上、このような行動は誰かが取らなければならなかった、そう思います。

 それはそれとしてどこに落とし所を見出すべきなのかというのはまた難しい問題です。ともかく、最終的にメーカーが潤って、納得がいく道を見つけられればそれが一番良い。そのことに異を唱える人はいないとは思うのですが、実際に既存のビジネスモデルと衝突しない形でどうすれば折り合いを付けられるのか、結局黙認が一番良いのではないかと思う人も多いかとは思います。

 そこで表題の話になるのですが、いっそのこと、プレイ動画の配信権を有料で販売することは出来ないものかと。

「見たい」が先か、「見せたい」が先か

 ゲームのプレイ動画を配信する動機は大きく2種類に分けられます。ひとつは、その動画を見たい人達が一定数いることがわかっていて、配信すればアクセスが稼げるという期待によるもの。もう一つは、ゲームそのものが好きで、ゲームの魅力をより多くの人に伝えたくて配信するもの、ですね。今回特に問題になっているのは前者の立場に立つ動画でしょう。

 配信すれば視聴数を稼げる。その為に他人の著作物にただ乗りしても悪びれない。そんな無法はまかりならんというのは人情として当然です。作品の力で視聴数を稼げるのならば、その対価をちゃんと支払うのが筋というものでしょう。例えば、ニコニコ生放送の1枠30分で、あるプレイ動画を配信する場合は500円の追加料金を取る。これなら例えば10時間のプレイ時間が見込まれるゲームなら最後まで見せようとすれば1万円の出費になります。ゲームをもう1本買うのと同じかそれ以上ですね。それだけの対価を支払ってでも配信したい、配信する価値があると思ってするのであれば、多少なりメーカーの溜飲も下がるのではないでしょうか。また正規の手続きを用意することで、非正規な手順で配信された動画を一律に排除する強い理由も出来ます。啓蒙という立場を取るなら、ノベルゲームの動画配信はお金を払ってするものだというモラルを形成するほうが落とし所として現実的なのではないかとも思います。

「見せる」事にお金を支払いたい

 もう一つ付け加えるなら、こういったやり方がメーカーにとって副次的な収入源となり得るのではないかということですね。Togatterのほうでも指摘されていますが、パッケージゲームの多くは初回売り切りでよほどのヒットタイトルでない限り再版流通はないというのが現状です。そうした中でも埋もれるのが惜しい良作であれば、熱心なファンが布教の意味も込めて有料の配信に踏み切る可能性はあるんじゃないかな、と。

 もともとこのアイデアは、ニコニコ動画で提供されているアニメ番組等を有料で生放送で配信させてもらえないだろうかと考えていたのが発端だったりするのですが、お金を払ってもいいと思うような作品というのは多くの場合、自分以外のもっと多くの人に見てもらいたいと思うものなんですよね。お金は自分が払うから、とにかく見てくれ。知ってくれ、と。

 公式に配信されているアニメ作品等と違い、ゲームの場合は実現するにしても結局ユーザーが勝手放送する際に任意で選択するような形にしか出来ないところが難しいところではありますが、最終的になんらかの落とし所を求めるのであれば、ひとつの可能性として考えてもよいのではないかなと。

 ゲーム実況に限らず、映画やアニメ作品も、自分が見るためだけでなく、誰かに見せるためにお金を支払うことが出来る、ネットを介して個人レベルで上映会が出来る世界が来ることを願ってやみません。