「ニコニコ映画」の現時点での評価

 ニコニコ動画でコメントをしながら映画を見れる新サービス「ニコニコ映画」が始まりましたね。なかなか期待のサービスということで、現時点で分かっている情報からこの新サービスの実力を評価してみたいと思います。

映画・ドラマ - ニコニコチャンネル
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価格

 まずはツッコミの多いであろう価格面。48時間レンタル300円、期間無制限の買い切りで1000円というのは、提携するワーナーが独自運営しているワーナーオンデマンドの価格設定に倣ったものですね。旧作レンタル300円というのは若干高い印象ですが、ワーナーのサービスでそれなりに実績データの蓄積もあるでしょうし妥当と言えば妥当なのでしょう。それよりも注目はやはりエレクトリック・セル・スルーと名付けられた買い切り形式ですね。映画の買い切り販売自体は前述ワーナーオンデマンドやiTunesPlaystationSTORE等でも既に行われていますが、ニコニコ動画の枠組で行うことで面倒な紐付けを気にせずどの端末でも自由に試聴出来るというのは従来にないアドバンテージですね。とはいえサービスイン当初はiOSには未対応とのことで、ここは一刻も早い対応が待たれるところですね。

 価格面で目玉としてアピールされている、プレミアム会員なら新作100円旧作50円ですが、これは配信日時が固定されたニコニコ生放送でのライブ配信のみ、というのは注意のしどころですね。タイムシフト視聴に対応していないのがもったいなくて、生放送での配信は同時視聴感を高めて口コミ効果も期待できるのですが、その時間帯に2時間ガッツリ映画を見れるかというとちょっと躊躇してしまう人も多そうですね。1週間とは言わなくともせめて24時間くらいはタイムシフトで視聴出来るようになっていると購入のハードルが大きく下がるのではないかと思います。

ラインナップ

 ラインナップは100タイトルとあまり多くはありませんが、大作・話題作を中心にニコ厨の感度の高そうな作品を取り揃えていてなかなか好感触です。まずはワーナー作品のみということで、20世紀FOX作品であるコマンドーがないのはとても残念なのですが、他社とも交渉中とのことで今後に期待しましょう。コマンドー配信時には是非とも大きな祭にして欲しいですね。

コミュニティ

 ニコニコ動画のサービスということで、やはり動画上にコメントを付けられることが大きな売りですね。特に動画の買い切り販売とコメントサービスは相性が良いのではないかと以前から思っていたので実際にどうなるか注目です。まだサービスイン初日でざっと回った感じでは、どの映画もせいぜい10数再生、コメントもほとんど付いていないのですが、買い切りで買ったファンは同じ動画を繰り返し視聴してコメントを付けていくでしょうから今後どう変化していくか長い目で見守りたいと思います。ちなみに本編の視聴ページに行くと購入しなくてもコメントだけは見ることが出来たりします。

 もう一つ注目したいのがすべての映画に無料で視聴できる予告編がついていることですね。これにももちろんコメントをつけることができます。3分程度の動画をコメントで賑やかすというのはまさにニコニコの得意とするところなので、ここはもっとアピールしてもいいんじゃないんでしょうか。例えば予告編のみのランキングなんかを表示すると良い感じに盛り上がりを期待できるのではないかなどと考えます。

ニコニコ映画はHuluの対抗なのか

 ちょうどHulu日本語版が上陸して間もない時期ということもありHuluと比較する声もありますが、ニコニコ映画とHuluはまったくターゲットの違うサービスといった印象ですね。Huluはとにかくたくさんの映画やドラマを見たい積極的な映画ファン、ドラマファンを主なターゲットにしているのに対して、ニコニコ映画は「話題になっているから、みんなが見ているから見る」というよりライトな映画ファン、あるいは映画全般をたくさん見るわけではないけれどもこの1作品だけは大好きなんだという人たちをターゲットにしているように思います。

 一つの作品を溺愛するファンがコミュニティを盛り上げ、その盛り上がりをコメント等で可視化することで一見のお客さんも誘い込もうというのが狙いでしょうね。コアターゲットの囲い込み戦略は収益性は高いですが縮小再生産に陥る可能性が高いだけに、こういったニコニコらしい取り組みが上手くいってより市場が拡大することを期待しています。