ニコニコ動画は「ゼロ」を目指す

 ニコニコ動画5周年ということで、新サービス発表会が久しぶりにありました。と言っても新バージョン「ZERO」の導入は来年4月から。そして今回の目玉はついに動き出した利用者への利益還元プログラム。つまりこれはこれまでたっぷり溜め込んだ黒字を吐き出して「ゼロ」を目指すということですね!

 ということで冗談はさておき、注目の2つのサービス、「クリエイター奨励プログラム」と「ニコニコ市場ポイント還元」について解説してみたいと思います。

『原点回帰』ニコニコ動画5周年記念新サービス発表会(仮) - 2011/12/12 19:00開始 - ニコニコ生放送
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2011/12/027835.html

クリエイター奨励プログラム

 まずはこちらから。動画や静画、ニコニ・コモンズの素材をこのプログラムに登録すると、人気や貢献度によって一定程度の奨励金を登録者に分配するというもの。原資はプレミアム会員収益からということですが、現在のプレミアム会員売上はおおよそ年間80億円強。生放送後半の質疑応答によると年間4億円程度を見込んでいるということですので、プレミアム会員収益の5%を用いるということかもしれませんね。

 面白いのが、その貢献度の判定にニコニ・コモンズ新設された「コモンズツリー」を用いること。コモンズツリーは投稿動画の素材として利用した作品やリスペクト先の作品を親作品として登録することで動画の互助関係を可視化しようという試み。例えばMMD作品だとしたら、モデルやステージ、音源等を借りてきた先、あるいは素材としては用いてなくてもネタ元として借りた作品を数やルールを特に定めずに登録出来るということです。従来であれば動画説明文で行なっていたものをシステム化、構造化したものという解釈でよいでしょうね。

 発表会によると、クリエイター奨励プログラム自体がこのコモンズツリーを活性化するための仕掛けということ。ニコニ・コモンズに素材として登録された動画や静止画が親作品として登録されると、子作品の人気に応じて「子ども手当」という名前で奨励金の分配率が上がるということのようです。登録動画に奨励金が分配されるのは最低でも動画投稿3ヶ月後、人力によるチェックも行われるようなので著作権的に問題のある動画に奨励金が分配される心配は少なそうです。

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ニコニコ市場ポイント還元

 こちらはニコニコ市場アフィリエイト収益を原資として利用者にポイントの形で還元するというもの。発表会で用いられた動画では「ニコニ広告に使える」ことを強調していましたが、ニコニコ生放送の延長や有料動画購入にも使える通常のニコニコポイントで間違いないようです。40円につき1ポイントが動画投稿者/生主と購入者にそれぞれ、購入額の合計5%がユーザーに還元される計算ですね。これは機械的な処理のようなので著作権的に問題のある動画であっても問題なく支払われることになるのかな?購入者に利益還元することになることも含めてAmazonアソシエイトの規約的に問題がないのかちょっと心配になってしまいます。現金ではなくポイントでの還元なので問題ないのかな?と思いつつ、1月31日までの期間限定との事なので、特に何も考えずにぶっつけ本番で実験的に行なっているのかもしれません。

ニコニコ市場

利益を小さくする工夫

 最初に冗談めかしてニコニコ動画は黒字ゼロを目指すんじゃないかということを書きましたが、実のところ半分くらい本気だったりします。上記2つとも、原資はプレミアム会員収益とアフィリエイト収入の一部を充てるという形で、予算的にはニコニコ動画本体からの持ち出しではなくあくまで儲け過ぎた利益を縮小する構造になっていることは注目でしょう。先日の4Gamerでのインタビューで、川上会長が、サービスを安定させるためには儲からない構造を維持する必要があるといった持論を語っていましたが、今回のその施策もそういった考えに基づくものなのかもしれません。

「儲けちゃ駄目」は道徳じゃなくて科学の話。論理的に駄目なんです――川上量生氏との特別対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第2回 - 4Gamer.net