ソーシャルゲームのRMTは根絶できるのか

※本日昼頃上げた記事の改訂版です。昼に上げた記事は数字に重大な誤りがあったため一旦取り下げました。
 昨日あたりから、モバゲーの「アイドルマスターシンデレラガールズ」でトレード機能を制限されるユーザーが続出しているという噂を聞き、これはいよいよモバゲーが本気でRMTの対策に乗り出したのかもしれないと考え他のゲームの様子もチェックしてみたのですが、モバゲーの人気タイトル、「怪盗ロワイヤル」や「ワンピースグランドコレクション」、「ガンダムカードコレクション」「大召喚!マジゲート」などでも示し合わせたようにトレード機能の使用の変更、注意喚起等が行われており大規模な取り組みになっている模様です。

 Yahooオークションの動きをチェックしていたのですが、「モバゲー」関連の出品数は昨日から大きな動きはないものの、「GREE」での検索結果が昨晩の約30,000件から20,000件程度と急減しており、これは申し合わせた上で同時に対策に取り掛かった可能性が高いように思います。

【モバマス】大量複製アカウントがBANされるぞ!! - とりあえず速報 シンデレラガールズ(モバマス)まとめ
【モバマス】サブ垢持ちはトレード・招待の凍結をされるらしい - とりあえず速報 シンデレラガールズ(モバマス)まとめ
http://auctions.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%B2%E3%83%BC&auccat=&aq=-1&oq=%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%B2%E3%83%BC&ei=UTF-8&slider=0&tab_ex=commerce
http://auctions.search.yahoo.co.jp/search?p=GREE&auccat=&aq=-1&oq=&ei=UTF-8&slider=0&tab_ex=commerce

RMT対策の難しさ

 昨今大きくクローズアップされてきたRMTですが、なぜ今まで本格的に対策をして来なかったのかと疑問に思う人もいるかも知れません。その最大の理由は今実際に騒ぎになっているように、RMT業者を根絶しようと思ったら、直接RMTに関与していない一般のユーザーも巻き込まざるを得ないからなんですね。どうしてそうなるのか、まずはRMT業者の実際の手口について解説します。

 なぜRMTの取締が難しいのか。それは、RMT業者は実際に顧客と取引するためのアカウントと、商品であるゲーム内資産を保管しておくアカウントを別々に管理しているからなんですね。業者は実際の取引の際にだけ倉庫用アカウントから資産を引き出し、取引用アカウントには資産価値のあるアイテムは普段は持たせない。だからゲーム運営がRMTを行ったアカウントを特定しそのアカウントを凍結しても、業者の手元には資産は残り続け、また別のアカウントを使って取引がされるだけ、というイタチごっこが発生するんですね。もし本気で対策するならば倉庫アカウントをこそ特定し、凍結しないといけない。もちろん今までも随時調査し、特定出来た場合はアカウントの停止措置等を取ってきたとは思われますが、倉庫アカウント自体も頻繁に移動することで追跡を躱されていたわけですね。

 今回、モバゲーの「アイドルマスターシンデレラガールズ」あるいはその他のタイトルで行われている措置は、おそらくRMT取引用アカウントと1度でも接触があったアカウント全て、あるいは直接の接触がなくとも不自然なアイテムの移動の行われているアカウントのトレード機能を一時的に凍結する、というものです。トレードを停止した状態でアイテムの流れ自体は膨大なログとなって残っていますから、それを人海戦術で1つずつ追っていけば大量のアイテムを販売目的で保管しているアカウントの特定はそれほど困難ではないでしょう。そして一度アイテム資産を失ったRMT業者が再び商売を再開するためには労多くして実少なく、おそらくソーシャルゲームにおけるRMTは今後急速に衰退していくのではないかと推測します。

「世間の声」に答えた苛烈な処置

 モバゲー、あるいはGREEがここまで苛烈な処置を取ってきたのは、もちろん新聞等のメディアを中心とした「世間の声」に答えるためです。「なぜ対策しないのか」「犯罪の温床になっているのではないか」「癒着があるのではないか」といったなんの根拠のない無責任な批判がほとんどとはいえ、世間の悪印象を払拭するため、あるいは長期的な視点でのユーザーの便益を考えてこのような処置を取ったことは最大限評価されるべきでしょう。

テクノロジー : 日経電子版
http://blogos.com/article/33428/
ソーシャルゲームのRMT対策を改めて考える - 未来私考

 もちろん、今後の推移も見守る必要はありますが、モバゲーは過去にも出会い系の温床になっているという批判を受け、個人間でやり取りされるミニメールの中身まで検閲するという、ある種やりすぎなくらいの徹底的な出会い系対策を打ち出し、現在もおそらくは世界でもっとも男女間の交流に厳しいSNSとなっているという実績もあります。おそらく今回も、完全に業者が根絶されるまで徹底的に対策を撮り続けるものと思われます。

 とはいえ、ソーシャルゲームからRMTが根絶されても、PC用のMMORPGにおけるRMTは今後も残り続けていくでしょう。先述の記事にも書きましたが、この2者は発祥も対象としている顧客も全く違う存在であり、またそもそもRMTという行為そのものはなんら違法性のない、あくまでサービスの利用規約違反でしかないものですから、現在ある意味安定した関係を築いているMMORPGRMT業者をMMORPG運営が労力をかけて排除する理由はありません。先般GREEが申し入れたRMT業者に対する申し入れも、あくまでMMORPGを中心とした業者に、ソーシャルゲームのアイテム売買の自粛を呼びかけただけで、業者そのものを潰す意図はないのは、業者を名指ししなかったことでも明らかですね。当然、彼らが販売を続ければそれは個別に対応はするでしょうから、そのような旨味のない商売からは早晩手を引いてくれるものと思っています。そもそも、現時点でもサイトを構えているRMT業者のソーシャルゲーム関連の取引量はごく微小だったりしますしね。

http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0330_01.html

 以上はあくまで私見であることを最後に念を押した上で、RMTをめぐる今回の、そして今後の動きを理解するための参考にして頂ければ。