湖岸の盲点−倒叙ミステリを体感するユニークなノベルゲーム

商品総額10万円相当の「読者への挑戦」付きミステリサウンドノベル - 敷居の部屋
 敷居の先住民さんの紹介記事で興味を持ってプレイしてみたフリーのサウンドノベル「湖岸の盲点」。これがなかなか面白かったですのでちょっとオススメしてみようかなと。

安楽椅子犯人:湖岸の盲点

 予め犯人とその犯行を描写しておき、その犯罪計画のミスを探偵が暴き立てるという形式の倒叙ミステリ。刑事コロンボ古畑任三郎が有名ですが、推理そのものよりも、探偵役のキャラクターの面白さ、その洞察の見事さを受け身になって楽しむという受容をしがちなジャンルです。というか私自身がそうだったんですけれども(笑)というのも、犯人は分かっている。トリックも分かっている。動機も分かっている。となると読者(視聴者)としては探偵役がどうやって犯人を追い詰めていくのかを客観的に楽しむ方向へどうしても誘導されてしまう。
 しかしこの「湖岸の盲点」では、犯人の犯したミスを4つ見つけるという設問をおくことで、見事に読者に探偵役の視点に誘導することに成功しているんですね。これはとてもユニークで、なかなか得難い体験でした。
 といっても一読目はやはり客観的な視点になってしまいます。そこで目についた犯人のミスを探偵小此木鶯太郎が飄々とした態度で、犯人に投げかけていく。ああ、なるほど、やっぱり。などとニヤニヤしながら、気付いたけれども、指摘されなかったミスを、なぜ指摘しなかったかというところから、ゲームの本番は始まりです。

 このサウンドノベルには<<選択肢>>はありません。しかしこれは紛うことなくゲームとして成立している。2巡目。指摘されなかったミスをなぜ探偵は指摘しなかったのかを胸に留めつつ、ひとつひとつ、犯人が探偵に見せたい・思い込ませたいもの、そして実際に探偵の目に映ったものの差異をじっくりと見つめていくと、犯人の犯したミスがくっきりと浮かび上がってくる。そして、そのズレを利用して探偵が罠を仕掛けた瞬間を見つけた時には思わずガッツポーズをとっちゃいましたね。うーん、これはなかなかエキサイティング。

 ノベル形式の名作というと1シナリオを踏破するのに数十時間かかる重厚長大なものがもてはやされる傾向がありますが、この作品は問題編1巡に1時間かかるか掛からないか程度。はじめての試みということもあってか、真剣に読み込めば2、3周でちゃんと解答までたどり着けるようにきめ細かくヒントが散りばめられている。本格ミステリ好きにはちょっと物足りないかもしれませんが、ミステリーゲーム好き、倒叙ミステリ好きの人はプレイしてみて損はない逸品です。

 ちなみに賞品付きの読者への挑戦の締め切りは8月11日午前1時。我こそは、という人は挑戦するなら今のうちですよ−。

追記

検索から飛んできてくれる人が多いようなので、自分が正解だと思う解答へのヒントをちょっと書き留めておこうかな、と。締め切りは本日深夜ですので、どうしてもわからん!という人はご参考に。
ヒント:反転して見てください
ガソリン、桟橋、足跡、懐中電灯