動画共有サービスはネットはタダではないことを可視化する

メディア・パブ: YouTube、膨れ上がる赤字

 割と景気のいい話ばかりしていたYouTubeが、いよいよ本格的に赤字がやばいという方向に広報を切り替えてきたかな、などと考えてしまったり。

 この記事からではYouTubeの収支がどれくらい悪化しているのか(そもそも本当に悪化しているのか)わからなかったので少し調べたのですが、あまりまとまった数字が出てこないんですよね。

YouTube 会社情報

 このあたりを見てもハッキリしたことが書いてない。2006年のGoogle買収前のYouTubeの経営状態に関して考察した梅田望夫さんの記事を発見したんですが、このころからYouTubeは本当に収益化可能なのかというのは言われていたんですよね。

YouTubeについて(1) - My Life Between Silicon Valley and Japan

 当時100万$と言われていた通信費が3億6000万$(360倍!)にまで膨れあがって、その後様々な収益チャンネルを追加したにもかかわらず、未だ通信費以上の売上すら獲得できていない。世界同時不況による広告の冷え込みもあって、このままの路線で収益化を計ることはほぼ不可能だろうというのは素人目にも伝わってくる。

広告モデルか、ユーザー課金モデルか

 一方でサービス開始以来ずっと念仏のように赤字赤字と唱えていたニコニコ動画は、08年の通信費14億8200万円に対し、有料アカウントの売上だけで11億円強賄っており、今後の改善の見通しもあり概ね通信費とトントンになってるんですね。今もニコニコ動画は赤字ですが、それはほとんど人件費や設備投資によるもので、拡大路線を止めればいつでも収益化に向かえる体制が整っている。だからこそ強気でガンガン押せていけているんですね。

 インターネットの登場以来、ネットはすべてを無料にするという言説がまことしやかにささやかれてきましたが、こうして実際にデータ量の大きい動画等のリッチコンテンツが流通し始めるとネットの帯域は有限で、コストもけして無料にはならないということが明らかになってきています。とはいえ、従来の流通ルートを用いるよりは遙かに安価なことは間違いなく、それを踏まえた上で流通費用をちゃんと利用者に賄ってもらう体制さえ整えればコンテンツビジネスはちゃんと成り立つ、そう考えています。

 YouTubeが今後どのような収益モデルを組み立ててくるのかはわかりませんが、現状大幅に赤字であり、その主要因は通信費であるということを喧伝し始めたのは良い傾向だと思いますね。ネットは安価ではあるが、けしてタダではないことが普通の認識になったとき、本当の意味でネットによるコンテンツビジネスが始まるんじゃあないんでしょうか。