今、この時代を生きるための「アオソラ」

 カッコいいものは好きですか?

 もしあなたがカッコいいものが好きなら、今すぐこの漫画を読むべきだ。

 月刊マガジン2009年10月号巻頭読切、「アオソラ」。
http://88552772.at.webry.info/200909/article_3.html
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/014/118/04/N000/000/000/124941965292216408579.jpg

 「金色のガッシュ!」終了より1年半、ついに再始動した雷句誠が最初に届けてくれたのは、彼の少年時代の親友との思い出の物語。とりたてて特別なこともない、どこにでもあるありふれた少年時代。なんでも一生懸命やるなんてのがバカらしくて格好悪く思える普通の少年だった、アオ。どんなに頑張ったって、どんなに才能があったって、どうせ人間いつかは死んでしまう。だったらその日その日を楽しく生きればそれでいい。大人になったっていいことなんてありゃしないし、ニュースを見ればこの世界は100年後には滅んでしまうかも知れない何て言っている。何もかも、いずれ終わってしまうなら、なんで一生懸命やらなきゃならないんだ?それは、今この時代に生きる若者にとって、当たり前の前提なんじゃないかと思う。

 だけど思い出して欲しい。ガンプラを作ったあの日、友達の小さな勇気をみたあの日、クラスメートの凄い才能をみたあの日、何かを、心の底からカッコいいと思ったあの日のことを。友達の、一生懸命な姿を心の底からカッコいいと思ったあの日を。いったいそれより楽しいことなんて、あるのだろうか。それよりワクワクできることなんてあるのだろうか?

 「アオソラ」。この43ページの読切作品には、漫画家雷句誠の原点がある。こんな時代だからこそ、こんな世界だからこそ。今をもっと、より楽しく生きていくためにはどうすればいいのか。その答えがこの漫画には、ある。

 新創刊される別冊マガジンの看板漫画になるであろう、雷句誠の新作「どうぶつの国」。正直のところそれほど大きな期待はしていなかったのですが、この読切を読んで考えを改めましたね。雷句誠という作家は、モノが違う。このありふれたプロットの物語にここまでの深みを与えられる作家がどれくらいいるだろう。この青雲の志を体現していったとしたら、いったいどれほどの傑作になるのだろう。期待に胸が膨らみます。ともかくも、読切作品でここまで深く胸を打たれた漫画に出会ったのは本当に久しぶりだ。記事を書くために読み返して滂沱の涙を流してしまった(笑)。今この時代を生きる人にこそ読まれて欲しい、そんな素敵な漫画です。是非ご一読を。