ニコニコ動画黒字化に思うこと

 ついに、というべきか、やっと、と言うべきか。5月13日付けのドワンゴの決算説明会にてニコニコ動画の四半期決算の黒字化が報告されましたね。黒字化自体はもはや時間の問題だと思っていたので驚きはないですが、ずっとウォッチして来た身としてはやはり感慨深いものがあります。

http://blog.nicovideo.jp/niconews/2010/05/007484.html
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2010/05/007486.html

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 大規模な動画投稿サイトが黒字化したのは世界で初めて、とのことですが、その原動力がプレミアム会員であることは論をまたないでしょうね。決算説明会のニコ生で夏野さんも言及していましたが、広告収入と有料会員収入のハイブリッドでやっているのは強みで、広告収入は近年特に波が大きく先行きが読めないので収益の柱とするには心許ないんですよね。公約だった単月黒字は実は去年の12月に達成していたとのこと。その後1月2月は広告収入の落ち込みで赤字に戻ってしまったが、会員増と、(言及はなかったけど)ニコニコ大会議ツアーがファイナルを迎えたことで3月期は大幅に黒字に転換したということでしょうね。先日のエイプリルフールネタの時もたぶんそうなんじゃないかと予想してたんですがあの時点で実はもう黒字になっていたわけですw。月間3万人超のペースでプレミアム会員は増えているようでこのペースなら年内にプレミアム会員100万人を突破しそうですね。

プラチナ会員について

 決算説明会の中で、仕込みなのかアドリブなのかわかりませんが、プレミアム会員の更に上のプラチナ会員的なものは導入しないのか?という問いに「前向きに検討中」と答えた夏野さん。これも以前から結構主張はしてたんですが、それなしで安定黒字にまで持ち込んだ以上今さらあえてやる意味はあるのかな?とちょっと疑問ですね。ニコニコ生放送等で優先枠を作るとかそういう方向になるんですかねー。ちょっとピンと来ていないです。あるいはニコニコアプリデベロッパー向きのプランだったりするのかな?

これからニコニコ動画に目指して欲しいこと

 こうして黒字になったことで、当然「クリエイターへの還元」「権利者への還元」という話が出てくるんじゃないかと思います。もちろんそれも大事と言えば大事。だけど今ニコニコ動画に集っている作り手ってのはみんな、ニコニコ動画の仕組が好きで、面白がって、手弁当で参加してるんですよね。それにちょっと儲かったからって小銭を還元しても大して有り難くも面白くもない話なんですよね。そもそも作り手の多くは自身がプレミアム会員だったりしますしね。だからそれよりニコニコ動画には、より自由により簡単に創作活動へとリーチ出来る環境作りに今まで以上に力を入れていって欲しいですね。だから赤字の元凶ことニコニコ大会議ツアーも全面的に肯定しますし、ニコニコミュージカルや作曲指導のワークショップ等、作り手を支援する方法を模索しているのは非常に頼もしいですね。

Youtubeとの比較について

 これも説明会で言及されていた話なんですが、Youtubeについてどう思うかという質問に大して「あちらはニコニコ動画と違ってテレビ番組とかが見れたりする。それが最大の違い。だけどそれって本当は良くないことなんだよね。ニコニコはちゃんと許可とった上で番組を流せるようにしていきたい」といったやり取りがありなかなか唸らされましたね。個人的には既存のテレビ的な番組にはあまり興味はないのですが、資料を見るに公式生放送の回数とニコニコ生放送の視聴者数てのは完全に連動してるんですよね。やはりサイトにアクセするだけで一定以上のクオリティの番組が垂れ流しで見える(読める)というのは強いようですね。

ニコニコアプリについて

 今回の説明会ではまったく言及されてませんでしたが、今年後半のニコニコで一番期待してるのは実はこれだったりします。今ニコニコ遊園地という名称で運営提供のゲームがいくつか始まってますが、そうではなくやはりCGMの一環として、ユーザー自らが面白いゲームやツールを提供できるようになってこそニコニコ動画なんじゃないかと思うんですよね。例えばただ動画を見るだけでも、ユーザーが独自にアルゴリズムを組んで自動的にオススメ動画をレコメンドするようなツールが出てくるかも知れない。複数の動画を連動させてノベルゲーム風に動作させたり、あるいはもっとまったく思いもよらないような新しい遊びを発見していってくれるんじゃないか、そうあって欲しいと思っています。

 世界初、そして当面の間は世界唯一の「黒字化した動画投稿サイト」として、これからも面白い事を追求し続けるサービスであり続けて欲しいですね。