歴史は繋がっている。―風雲児たちを改めてお勧めしてみる―

 id:izuminoさんからIDトラバいただきました。風雲児たちは江戸時代300年間を30年に渡って描き続けた超大河歴史群像漫画なのですが、昨年来オフ会でお勧めしたのをきっかけに何人かの影響力の強い人に読んでもらえてとても嬉しいですね。

『風雲児たち』無印をコンプリートしたので布教してみる - ピアノ・ファイア
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20081018/p1
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080420/p2
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/searchdiary?word=%2a%5b%c9%f7%b1%c0%bb%f9%a4%bf%a4%c1%5d

 なんというかですね。あまりにもものすごい傑作なので狭い界隈にいると周りの漫画を読んでる人間はみんな読んでるのが当たり前になってくるんですよね。なので、こうやってオフ会なんかで世界が拡がると実はまるで読まれていないという事実を改めて認識することになるという(笑)。もっと積極的にお勧めしないといけないですよね、この作品は。

 現在コミック乱で連載中の最新話では幕末期最大の巨星、島津斉彬が静かに息を引き取りました。明治維新まで残すところあと10年。関が原の薩摩の敵中突破から始まったこの物語で、さまざまな形で受け継がれてきたバトンが、ついに最後の走者に渡されたと言っていいでしょう。

 長州の吉田寅次郎(松蔭)、村田蔵六大村益次郎)、薩摩の西郷吉之助(隆盛)、土佐の坂本竜馬…誰もが知っている英傑たちが歴史の表舞台に立つまでに、これほどたくさんの、芳醇な物語が連なっている…。風雲児たちを読むと歴史は人の営みの連なりであり、過去と現在は確かに繋がっていると言うことが確かな実感を持って伝わってきます。今と歴史は決して断絶していない。そして今は確実に未来へと繋がっている、と。

 江戸幕府崩壊まで10年を切った作中で、すでに幕府の内部は朽ち欠けてはいるものの、天下は泰平でこの世界が一変してしまうような予感は、佐久間象山島津斉彬のような英才以外はまだ誰も持ち合わせていないんですよね。だから傍目には江戸と明治はあれほど断絶しているように見える。けれどもそうではなくって、そこに繋がる萌芽は今の段階ですべて出揃っているんです。

 「歴史は夜作られる」みたいなごく一部の特別な人間だけが歴史を作ってきたような史観も世の中にはありますが、そうではなく、歴史は一人一人の人間の一生をかけた営みの積み重ねで成り立っているんです。普段歩く道、見慣れた風景にも積み重なった歴史がそこにはある。是非風雲児たちを読んで、その感覚を味わって欲しいですね。