読み捨てメディアとしての紙の本は案外早くなくなるかもしれませんね

http://d.hatena.ne.jp/tempai/20090516/p1

 元記事には膨大な反論が寄せられてますが、技術的には既に紙の優位性はほとんど残っていないかと。無電源性はKindleでも採用されている電子ペーパーがほぼ解決してしまいましたし、解像度や検索性もその優位性はわずかしか残されていません。もう2、3年もしないうちにもはや紙を越えたと言われるような電子デバイスが登場するのはほぼ間違いないでしょう。ただし、電子ブックの普及の歩みが遅いのは、デバイスの問題じゃないんですよね。

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 デジタルデータの最大の強みは、それを出力するためのデバイスを選ばないこと。PCでも携帯でも電子ブックでも、そのフォーマットに対応さえしていればどんなメディアでも閲覧できる。これは紙にはない最大の利点であると同時に、コピー問題という最大のボトルネックでもあるんですよね。どんなメディアでも再生可能ゆえに、いったんコピーフリーのものが出回ってしまったらそれを止める方法がない。なので現状の電子出版というのは専用の機器に1対1で紐付けされた不自由なフォーマットを採用してるんですよね。これが電子出版に歯止めがかかっている最大の理由でしょう。

 本音を言えば出版社も出来れば早く電子出版に移行したいと思っているはず。既に入稿はほぼ100%電子化されていますし、印刷にかかる諸費用は出版社の経営を圧迫する最大の要因になっている。漫画雑誌などはあれだけ安い紙とインクを使っていてもほとんどが赤字という有様です。一般雑誌も誌面の半分を広告にすることでなんとか成り立っているものの広告ビジネス自体が曲がり角を迎えつつある。どこかが先陣を切って成功を収めれば状況は雪崩を打つように変わっていくんじゃないかなって思っています。

 不正コピー対策としてはちょっと前にこんな記事が話題になっていましたね。

不正コピー問題の意外な解決策: たけくまメモ

 コピー抑制技術は生半可なものでは簡単に解除されてしまいますし、厳しいプロテクトをかければその分利用者の利便性は下がります。なので技術的な抑制ではなく心理的な抑制をかけることでコピーに対するモチベーションを下げてしまおうというのは良いアイデアですよね。そもそも新聞や雑誌といった読み捨てメディアの場合はそれほどコピーに神経質になる必要もないのではないかな、と思いますね。新聞や雑誌は決まった日時に最新の情報がまとめて読めることが最大の利点ですので、それを届けるところまでをサービスに含めてしまえばわざわざ探してまでコピー品を求める人は少ない…もちろんおおっぴらに簡便にコピーを出来るようなやり方を提供されたら問題ですが、それは個別に対処可能だと思いますしね。

産経新聞、なぜ無料でiPhoneに 「失敗続き」の電子新聞チャレンジに手応え - ITmedia NEWS

 端末を選ばない電子新聞、電子雑誌といったものは数年以内に予想以上のスピードで普及するのではないかなと。それをより快適に表示するための専用端末も軌道に乗ってくるでしょう。そうなった時、雑誌や新聞ではない、一般の書籍もデジタルデバイスで読みたいという需要も高まってくる可能性は高い。一直線にどこかで急に切り替わるわけではなく、まず新聞・雑誌、続いて文庫や新書が電子化されて、気がつけば紙の本のほうがマイノリティになっているという日は、そんなに遠くないんじゃないかと最近の動きを見ているとそう思えますね。