アニメの再放送と東のエデン

 以前にも記事にしましたが、私は再放送をどう使っていくかが今後のテレビの生き残る鍵を握っていると思っています。

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 最近のテレビ界隈…どうしてもアニメ周りの話が中心になってしまうのですが、そのあたりを見ているとどうもテレビ局側もそれを意識して試行錯誤してるんじゃないかと思うんですよね。例えば今年の4月から始まった「ドラゴンボール改」。

ドラゴンボール改 東映アニメーション

 20年前に放映されたアニメ「ドラゴンボールZ」をデジタルリマスター、再編集、新アフレコで作り直したこの番組は今春始まったアニメ番組の中ではダントツの視聴率を稼いでいます。アフレコや編集の手間はかかっているとはいえ新規に作り直すよりもはるかに安価ですんでいるわけですからテレビ局としては願ったりかなったりですよね。何年か前に「まんが日本昔話」が同じくデジタルリマスターで夕方6時台に放送されて話題になったりもしてましたね。今後こういった例は増えていくでしょう。

 また、今年4月から新番組扱いで始まった「涼宮ハルヒの憂鬱」は、再放送の途中に時系列順に合った新エピソードを追加挿入するという試みを行っているようです。これも既存の放送に付加価値を付けてもう一度見てもらおうという目算でしょうね。

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 昨年4月から1年間に渡って放送されていた「ソウルイーター」は夕方と深夜のサイマル放送という珍しい形態を取っていましたね。これも深夜版には追加映像を加えるなど付加価値をつけることで“再放送”ではなくしていました。

 人気作の再放送は制作費をかけずに視聴率収入を得ることが出来る、テレビ局にとってはとてもおいしい商売なんですね。実際一昔前まではゴールデンタイムでも再放送というのはそんなに珍しくもなくって、サザエさんドラえもん、日本昔話などはエピソードの半分は過去の放映分からの再使用だったりしましたし、今でもテレビ東京NHKは放送中の人気番組を平行して再放送してたりもしますね。

 近年こういったものが減っていったのは再放送にNGを出すスポンサーが多かったからなんですが、逆に言えばスポンサーさえ説得できるのなら積極的に活用しない手はない。自分の観測範囲が狭いせいかドラマ一般でこういった試みはあまり聞かないんですが、アニメ制作会社とテレビ局が共同で試行錯誤しているというのが伝わってきます。

 人気作を再放送するのにはもう一つ効果があって、一定以上の知名度のある作品であれば、ライツビジネス…キャラグッズや関連商品の売上に大きく貢献するんですよね。ハルヒの再放送によって原作本やグッズのの売上が再燃したという話も聞きますし、それはドラゴンボールのような既に定番化したものであっても(むしろ定番化しているからこそ?)大きな底上げ効果が見込めるんじゃないかと思われます。視聴率の数字以上に大きなリターンが見込めるわけです。

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東のエデンは再放送を見込んでいる?

 それで、ですね。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/game/090519/gam0905190812000-n1.htm

 ひょっとして東のエデンは再放送を見越して予算を組んでいるのかな?と。製作規模を考えると深夜全11話でDVDもそれほど大きなセールスが見込めそうにはない。後に映画が控えていると言っても、テアトル単館ではロングランしてもかなり回収は厳しい*1よなあ、などと考えていたのですが、テレビで繰り返し放送することを考えているとしたら納得のいく話です。

 そのためには東のエデンが「繰り返しの視聴に耐える作品」になってなければいけないわけですが、繰り返し見たくなる作品というのには2種類あって、ひとつは「最後まで見た後でもう一度見ると新たな気付きを得られる作品」。もうひとつは「最後まで謎を残して何度も見ないと理解できない作品」。私は東のエデンは前者に属する作品になっているんじゃないかと期待しているんですね。

 謎また謎の連続で一見後者のようにも見せかけていますが、実は先出しした謎については逐次答えを出しながら物語が進行している。次々と新しい謎が提示されるのでぐいぐい引き込まれるけど、実は振り返ってみるととてもシンプルなお話になって見えてくる、そんな作りなっているんですよね。もちろん最後の最後で映画版に繋げるために大きなフックは仕掛けるでしょうが、基本的には誰でもわかるシンプルなボーイミーツガールものとして見れるんじゃないかなと。そのあたりのベタさをもって「お茶の間」という言葉を用いたのかもしれないなとも思いますね。

狙うは金曜プレステージ

 それで、ですね。もしテレビで再放送を仕掛けるとしたら、どうせやるならプライムタイムでやって欲しいですよね。ただ、普通に再放送してもたぶんあまり注目は集まらないですよね。やるならきっちり仕掛けないともったいない。ということで考えるんですけれども、映画公開直前に、フジテレビの金曜プレステージ土曜プレミアム枠で2日連続で全話一挙放送とかやると面白いんじゃないかなと。
 
 この枠だと過去に深夜ドラマ「SP」の再編集版と新作を2夜連続で放送したりといった試みがあったり。他局ですが深夜アニメの「デスノート」の再編集版が日本テレビ金曜ロードショー枠で放映されて好評を博したこともありましたね。何にせよテアトル新宿を満員札止めにするのはその後の地方興行を有利に進めるためにもほとんど必須の要件でしょうから、映画版直前に特番を仕掛けてくるのはまず間違いないんじゃないんでしょうか。

 そう思ってみると、ちょうど折り返しにあたる第5話が、それまでの話の流れを収束する形になってここまでで1本の映画としてまとまりをもっているようにも思えます。また改めて通して見てみるとしますかね。

*1:同じくテアトル単館でスタートして記録的なヒットをした時をかける少女でも最終的に興行収入2億6000万円