「電子書籍の衝撃」で実感した日本の電子書籍の今

 記事を書くのに手間取っているうちにキャンペーン期間が終了してしまいましたが、「電子書籍の衝撃」を電子書籍版110円キャンペーンで購読してみました。その感想と、電子書籍を購入する段階で思ったことなどを。

http://www.d21.co.jp/contents/campaign/denshi/

ソーシャルメディアによる本との出会いは既に実現している

 このキャンペーンについてはご多分に漏れずTwitterで知って、小飼弾さんの書評経由で購入したわけですが、これはまさに本書で取り扱われているソーシャルメディアを媒介したマイクロインフルエンサーが機能した例、ではあります。が、これ自体は電子書籍を待たずとも書評ブロガーとそのフォロワーという関係は既に完成されているんですよね。誰かの書評を読んで、欲しいと思った本は1クリックでamazonで購入出来てしまう。問題はそれが電子書籍という形になることで促進されるかどうか、という部分なわけです

購入に至る手順の煩雑さ

 今回キャンペーンということで、ディスカヴァーデジタルブックストアの会員登録をしたのですが、これがかなり面倒くさい。オンラインで全てが完結するのになぜ住所氏名の登録を求めるのだろうと思ったら通常の書籍の通販も取り扱ってるみたいですね。このあたりはもっと簡略化出来るように思います。

 次の関門は専用の電子ブックリーダーですね。ディスカヴァーはT-Timeを採用しているのですが、これがお試しの立ち読み版はブラウザのプラグインで読めるのですが、ダウンロードしたファイルはローカルアプリケーションをインストールしないと読めないという謎仕様。どうやっても読み込めないのでしばらく右往左往してしまいましたよ。このあたりの配慮もまだ行き届いてない印象ですね。

品揃えと読み心地

 さて、せっかく購入環境と可読環境が整ったので他にどんな本が買えるのかちょっと調べてみようと思ったのですが…ディスカヴァーのラインナップは本書の中で残念なジャンルとして語られていた自己啓発本の類ばかりですね。うーん、これはまったく食指が動かない。ならばと同じT-timeを採用している他のオンライン書店はどうだろうと調べて理想書店に行き着いたのですが、試しに購入手続きをしてみたところ、当然新たに会員登録を求められ中断。当たり前と言えば当たり前ですが、同じリーダーを使っていても、取り扱っている本は相互に乗り入れてるわけじゃなくてそれぞれ全然違うんですよね。理想書店で「電子書籍の衝撃」を検索しても出てこないし、逆もまた同様。オンライン販売の強みが全く活きていないですね。

 ちなみに、電子書籍を横断的に検索出来る外部サービスとかはないのかな、と調べて見たんですが、これもまた対応サイトがまちまちで実用に耐えるレベルのものはまだないといった印象ですね。何か決定版のようなサイトがあれば教えていただきたいところ。

 ところでT-Timeのウリとして、他のデバイスで読める形に書き出しをする機能があるのですが、これはライセンスを購入しないと使えないんですよねえ。せっかく面白そうな機能なのに試せないというのはつまらないので、せっかくだからライセンス購入してみようかと思ったのですが…「電子書籍の衝撃」は書き出しに対応していない(笑)。なにかこう、ちぐはぐです。

 本書の中で取り上げられていたKindle成功の秘訣のうち、柔軟な価格戦略という部分以外はほぼ全部×なんですよねえ。これでは日本で電子書籍が普及しないのも当然と言えば当然です。

 とはいえ逆に言えばこれらの障壁さえ取り除かれれば日本でも一気に普及する可能性はある。読み捨ての新書なんかは安価で買えるなら電子書籍でもいいって人は結構いるでしょうし。今回パピレスebookjapanといった大手の電子書籍販売サイトも回ってみたんですが、曲がりなりにもiphone/ipadへの対応を進めているし、以前は多かった使用期限付きのレンタル形式の販売もほぼ見かけなくなっていますね。少なくとも現場レベルでは時代の流れについて行こうという意識があるようには思います。コンテンツ自体は既に結構な量が揃っているんですよね。やはりネックは横断性のなさ…それぞれのサイトがそれぞれ独自の生態系を作ってしまっていてユーザーのニーズに応えられていないように思います。もたもたしているとAppleAmazonに美味しいとこ全部もってかれちゃいますよ。いちユーザーとしては、どちらでも構わないところではあるんですけどね。