「ニュータイプ、シャリア・ブル」を読む

 ソロモンを襲うララアのエルメス。その思念を感じ取るものは少なくないことが描写される。名もなき兵たちが「またララだ」といい、ミライもまた何かを感じ取る。一方でブライトはそれを殺気のようなもの程度にしか受け止めず、またシャアもララァのそれを「信じられん」と評し「ニュータイプは人類の悲しい変種かも知れない」とまで言ってしまう。そこにあるのはニュータイプに憧れながらそれに手が届かない男の嫉妬と焦りなのだろう。

 実直な、ある種昔気質の軍人であるシャリア・ブルがニュータイプとしての特性をもっとも発揮しているというのはシャアにとってみれば一層許し難いことだったのかも知れない。しかし自らの見栄と保身を優先して味方を見殺しにする鈍感さこそが、もっともニュータイプから遠い感性なのかも知れないなどとも思う。ララァはそんなシャアの弱さを知りながら、シャアを信じることをけして諦めない。その悲しみを受け取っておくと後々のアムロとの交歓の意味はかなり通りやすくなるのではないだろうか。