赤と青に色分けされた世界で
今回の国籍を持たない軍事力という発想は、純粋な国連軍を創設してしまおうという発想と同じ。この話をエンタメでもっとも人口に膾炙したのは、かわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』ですね。全31巻。・・・・あの31巻を、このほんの数分で表現してしまうんだから、、、この凄さや深さがわかる人って、ほんとどれくらいいるのかなぁ?と思ってしまう。いや、その深さを「わからす」ことがこの物語の本質ではないので、これこうでいいんだけれどもね。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080727/p1
「沈黙の艦隊」の戦闘国家やまと構想というのは先だって放映されていたガンダム00のそれすたるビーイングの理念そのもので、それが世界平和の為の恒久的システムになり得るかというととても難しくて…遠からぬ破綻を予め含んでいて、それでも世界の在り方に楔を打ち込むために殉死するためのものなんですね。
それとルルーシュの超合集国構想との違いは、国家連合からの承認を得た歴とした国連軍なんですよね。実のところこれが成立するには強大な外部の脅威―この場合は覇権国家ブリタニアの存在が不可欠で、そのパワーオブバランスの上に存在してるんですね。数多のSFやアニメで地球統一軍というものが外的脅威―侵略宇宙人などに対抗するために組織されたのと実は同質のものなんです。
シュナイゼルの目指す世界
その上で赤と青に塗り分けられた世界―それがバランスを取りながらゆっくりと100年の時をかけて融和していくというのは、これは実はシュナイゼルの目指す世界構想に合致したものである可能性が高い。それはR2第8話の
“勝ちすぎると、その先には敗北が待っているから。人は誰でも希望を探しているんだ。勝つということは、それを踏みにじってしまう。敵も味方も、同じなんだよ。みんな、何かを求めているはずだから”
というセリフに凝集されていて、シュナイゼルが戦略兵器としての核を求めているのも戦争を無意味化させる抑止力としての力をそこに見い出しているからなんですね。そういったものを折り込んで見ると合集国憲章17条を聞いた時のシュナイゼルの穏やかな表情がとても印象的に見えてきます。
シャルルとシュナイゼルの思想的対立
しかしこの緩やかに安定する世界という構想を、シャルル皇帝は真っ向から否定します。2つの勢力を分かり合えないものとして全てを得るか全てを失うかという最終戦争を煽ってくる。その先には、シュナイゼルが言うとおり敗北しか待っていないというのに。おそらくシュナイゼルにはシャルルが何故そのような幼稚な滅びの道を選択しようとしているのか理解できないはずです。
シャルル皇帝が世界に覇を唱えようとしている理由については前エントリで記述しました。不老不死とギアスの超常能力をこの世から抹消出来ないのであれば、それを世界平定の為の抑止力にしてしまえばよい、と。ここで重要なのは、この不老不死の力「コード」が、人から人へ引き継ぐことが出来るものであるということなんですね。おそらくは皇帝は、その権力の頂点で全てを統べるものが自分でなくてもよいと、考えている。いや、むしろそれを継ぐ覚悟と能力のあるものを求めていると言ってもいい。CCたちを知るシャルルにとって、永遠の生の苦しみから逃れるすべがないこともまた、自明ですから。超常の力を統治システムに組み込む。そして素養のあるものにその力を受け継がせていく。それこそが、シャルルの究極の目的。その最有力候補こそが、ルルーシュなんだと考えると、シャルルの今までの数々の言動に納得がいきます。
ルルーシュは何を選ぶことが出来るのか
OPの印象的なカット、世界地図を背景に青と赤の光に照らされるシャルル皇帝、皇帝と逆向きの光で照らされるシュナイゼル、そしてプリズムの光に照らされるルルーシュ。これはシャルル皇帝とシュナイゼルの対立、そしてその狭間で選択を迫られるルルーシュという構図の暗示と考えています。シャルルの立場に立つならば、不老不死の力を持つものは個を捨てて世界の全てを背負う必要がある。あるいはシュナイゼルの立場を取るとするならば、不死の力を持つものを完全に外界から隔離する、あるいはCCのように、世界から隠れ潜むように生きていくしかない。どちらにしろ力を得たものはけして平安を得ることは出来ない。あるいは自らの死によって全てを丸投げするという選択肢もあるが…それは、ないと信じています。
- コードの力を継ぎ世界の覇者となるのか
- コードの力を封印し、シュナイゼルやスザクに世界を委ねるのか
- 不老不死の業を背負い世界から隠れ潜んで生きていくのか
ルルーシュがいったいどの道を選ぶのか。それが残り9話で語られていくのでしょう。