情報圧縮論

「魔王×勇者」が「その先の物語」を描けた理由

今、Twitterを中心にしてものすごい勢いで拡散をしているWEB小説がある。 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」まとめサイト 2ちゃんねるのVIP板発祥の、いわゆる新ジャンルと言われている形式で書かれた長編物語。この物語がいかに強力な力を…

漫符によって伝わる言葉にならない感情

「東のエデン」に感じる違和感 - アニメ、漫画作品と映画作品の差異 - ご機嫌よう。さようなら。 東のエデンのような写実的な作り込みの作品で積極的に漫符(感情を表現する漫画的記号表現)を積極的に多用するというのは珍しいですよね。シリアスな展開の続…

東のエデン スクリーンの向こう側の記憶

さて、1週遅れで視聴中の東のエデン第2話を鑑賞しました。ジュイスの「持てるものの義務を果たしてください」という台詞を聞いて「モテるものの義務?」と思ったのは自分だけではないと思いたい(笑)。 そんな滝沢くんがモテるものの義務を果たした豊洲の水…

東のエデン 世界とワタシを繋げる物語

ここが…世界の中心なの…? ヒロイン森美咲のこの台詞から始まる東のエデン第1話をようやく視聴しました。噂に違わぬ密度とクオリティに期待が高まりますね。ところで、ヒロインの名前ですが、森美・咲なんですね。本編を見るまでずっと森・美咲だと勘違いし…

カレン、サヨナラのキス

コードギアスR2第22話「皇帝ルルーシュ」。今話も見所満載だったわけですが、その中でもやはり、特に注目したいのが、ルルーシュとカレンが、ついにキスをしたということですね。 当ブログでは過去2度ほど、ルルーシュとキスというモチーフで記事を書いてい…

快感原則に寄り添うことと物語性の両立

日経BPの谷口監督のインタビューが更新されていましたね。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080902/169503/ この中で出てくる“快感原則”という言葉は大変に意味深で、重要ですね。私はこれは、視聴者―受け手の感情をちゃんと揺さぶる作劇をす…

言葉の対象をずらす

最近すっかりただの感想ブログと化しています(笑)。久しぶりに情報圧縮論の話。R2第21話の脚本で面白かったのは、言葉の対象をずらすという技法が効果的に使われていたんですね。ちょっとその解説を。 “ピーピングされるのが趣味か?” スザクが見た幻影に…

赤と青に色分けされた世界で

今回の国籍を持たない軍事力という発想は、純粋な国連軍を創設してしまおうという発想と同じ。この話をエンタメでもっとも人口に膾炙したのは、かわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』ですね。全31巻。・・・・あの31巻を、このほんの数分で表現してしまう…

シャルル皇帝の目指す、嘘のない世界

“神を殺し、世界の嘘を壊そう” 第14話で明らかになった、VVとシャルルの契約。ここ数話“嘘”というキーワードが非常にクローズアップされています。ギアスという秘匿された力を行使するシャルルとVVが嘘を忌み嫌うというという矛盾をはらんだ構造。シャルルと…

ルルーシュの涙

“ニーナ、涙が流せるうちは大丈夫…” シャーリーの訃報を聞き涙を流すニーナに対して、カノンがかけた優しい言葉。涙を流すというのは、素直な感情を発露する事の象徴なんですよね。 1期22話でユフィの為に流した涙。前回R213話でシャーリーのために流した涙…

ルルーシュの願いは叶わない

今日は、七夕ですね。コードギアスの世界にも七夕の風習はあるのでしょうか。そこでルルーシュはどんな願いを綴るのでしょう。母の仇を討てますように?ナナリーが幸せでありますように?穏やかで優しい日常が戻ってきますように?だけどその望みは、少なく…

シャーリーの恋

ちょっと、更新を止めてしまいました。今日はコードギアスR2第11話で劇的にヒロインとして返り咲いたシャーリーさんの事を書き綴ってみたいと思っています。 日常を象徴するヒロイン シャーリーというキャラクターはコードギアスを彩る数多のヒロインの中で…

コードギアス 仕掛けられた時限爆弾

シンク―に仕掛けられた時限爆弾 さて、少し物騒なタイトルですが、今後の展開予想、ということになるのかな。第10話Bパート、シンク―の神虎とカレンの紅蓮可翔式との丁々発止の対決で、カレンがチェックメイトをかけたところで、エナジー切れで逆転負けをす…

囚われのカレンに多重に重ね合わされたもの

さて、少し間が空いてしまいましたがコードギアスR2第10話「神虎輝く刻」の解析を続けてみたいと思います。今日の夕方には最新話が放映されますので、少し急ピッチになりますが、ご容赦を。 第10話Bパート、カレン捕縛からの約2分間のシークエンスは、コード…

BSマンガ夜話で結実した漫画評論の新地平

先日放映されたBSマンガ夜話「ハチミツとクローバー」の回が目を見はるような面白さでした。歴史的な回だったといっても過言ではない。 マンガ夜話屈指の回『ハチミツとクローバー』 - ピアノ・ファイア すでにいずみのさんが取り上げていますが、いずみのさ…

繰り返しの差異によって浮き彫りになる情報 玉城とシンクーに見る繰り返し演出

玉城の場合 さて、R2第10話のMVPが玉城だという事に異論はないとは思いますが、まさに八面六臂の大活躍。口を開けば全てでまかせ、2秒前の台詞をすっかりきれいさっぱり忘れ去って思いつきで喋る彼は、今やコードギアスの作劇に欠く事の出来ない存在ですね。…

思考のシンクロニシティ コードギアスで多用される言葉をつなぐ演出

コードギアス反逆のルルーシュR2 第10話「神虎輝く刻」見ました!いや、良かった。本当にしみじみと。これぞ、これこそがギアスクオリティ!噛めば噛むほど味わいが増す…正直、8話、9話は3回も見たら十分かな…という感じだったのだが、10話はもう既に3回見て…

ただ一度だけの“ありがとう”

いい機会だから言っておく。さっきは助かった。今までも。それから、ギアスのことも。だから。一度しか言わないぞ。 第1期第11話「ナリタ攻防戦」はコードギアスの魅力が凝縮された屈指のエピソードです。その中でも、上に引用したシーンは特に印象的な名場…

ずっと側にいるという事

今日はコードギアス第1期9話「リフレイン」を再視聴したり。カレンと、その母の約束。母と一緒に安心して暮らせる世の中にしてみせるというカレンの望みは、そのままナナリーと一緒に安心して暮らせる世の中を願うルルーシュの望みとそのまま重なるんですよ…

補色で見るコードギアスのキャラクター配置

扇と玉城に見るコードギアスのキャラクター類型 - 未来私考 コードギアスのキャラクター類型についての補足をちょっと。 これは1期の頃から言われていたことなんですが、コードギアスの対になっているキャラはイメージカラーが補色の関係になっているんじゃ…

扇と玉城に見るコードギアスのキャラクター類型

よく、コードギアスのキャラクターは類型的、という話をよく耳にし、私自身もそう思わなくもないところもあるのですが、具体的にどうゆう類型と言われると、ちょっと言葉に窮したりもします。 ■スザクとルルーシュ■ スザクとルルーシュはアムロとシャアの関…

アーカイブを外部に持つか内部に持つか

6月4日09:13再掲*1 拙稿にトラバしていただきありがとうございます。大変恐縮しております。 情報の「圧縮術」と「省略術」は違うぞ - ピアノ・ファイア http://d.hatena.ne.jp/izumino/20080531/p1 404 Blog Not Found:圧縮と省略の違い...というか違いのな…

コードギアスにおける“白い羽根”のモチーフ

そのうち、ギアスってモチーフ鳥がいっぱいでてくるよねって話をしたいけど、気力ないなあ。 ルルーシュがギアスをかけるときに目玉からギアスマークが飛び出ますが、それが鳥がはばたくしぐさと一緒なんですな。 ブリタニアの軍隊の服に入ってるマークは、…

コードギアスで繰り返される“手つなぎ”というモチーフ

コードギアスにおいてもっとも繰り返し多用されているモチーフの一つに“手つなぎ”というものがあります。 第1期1話のアバンタイトル(オープニング前のシーン)での幼少期のルルーシュとスザクのエピソード。 崖から滑り落ちそうになるルルーシュの手をしっ…

なぜコードギアスなのか。情報圧縮論のモデルケースとしてのコードギアス

ここでちょっと私が何故ここまでコードギアスという作品に傾倒して多くを語ろうとしているかという事についてちょっと覚え書きというか、所信表明のような事をしておこうかと思います。 情報圧縮論―物語の密度を高めるには― 盟友LDさんとの共同サイト漫研で…