東のエデン 世界とワタシを繋げる物語

 ここが…世界の中心なの…?

 ヒロイン森美咲のこの台詞から始まる東のエデン第1話をようやく視聴しました。噂に違わぬ密度とクオリティに期待が高まりますね。ところで、ヒロインの名前ですが、森美・咲なんですね。本編を見るまでずっと森・美咲だと勘違いしていましたw。

世界の中心はどこにある?

 世界の中心の象徴としてホワイトハウスが描かれた後、イメージと違うとつぶやくヒロイン森美咲。この世界は自分たちとは違うどこか遠い場所にいる人たちによって動かされていて、所詮天に向かって祈ったりすることくらいしか出来ないという心象が描かれているのですが、この「世界の中心」というフレーズは今後物語において大きな役割を担っていくのではないかな、と考えています。不思議な青年タキザワと出会い、そして別れるまでの、11日間の物語。その物語の最初と最後で森美咲が「世界の中心」に対してどのようなイメージを持つようになるのか、その変化にまず注目していきたいですね。

11話11日間の物語

 予告等で「たった11日間の物語」であることが強調されている本作ですが、放映話数も同じく11話。これは1話につき1日物語内の時間が進行していくことを示唆していますね。こういった物語内で強制的に時間を進行させる作法は最近増えていて、これはメインストーリーをシンプルに骨太にするのと同時に、画面内に大量に表示される情報が取りこぼされてしまうことに説得力を持たせるのにとても有効なんですね。丁寧にロケーション取材された背景美術もまた同様で、現実のその場所をそっくりそのまま再現することで、受け止めきれないほどの情報が込められていることに一定の納得が得られるんですね。とりあえず分からなくても話の筋が追えるし、いったん筋を追うのを止めて画面を注視すればいくらでも情報が引き出せるようになっているんですね。

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圧縮されたフィクションの情報

 情報の圧縮のためのテクニックとして、他のフィクション、映画作品のネタを持ち込むことでメッセージを増幅させるという手法も用いられているように思います。アパートのクローゼットに隠された大量の武器を見て映画「タクシードライバー」を想起した主人公が、思い直してデニーロじゃなくてジェイソンボーン」とつぶやくシーンがなかなか印象的なのですが、これは「タクシードライバー」のトラヴィスような閉塞した社会に対して無謀な反抗を試みる物語ではなく、「ボーンアイデンティティ」のジェイソン・ボーンような、結果を求めずに自ら積極的に与えられた役割をこなしていく物語になることを暗示しているように思えます。

 

劇場版パトレイバー2との対比

 第一話の最後、東京に放たれたミサイルという情景は押井守「劇場版パトレイバー2」を想起せずにはいられません。ミサイルテロによって日本人に戦争のリアリズムを突きつけようとしたパトレイバー2に対して、ミサイルテロがあったとしても日常を続けていく、続けていかなければならない現在の世界の在り方を鋭くえぐっている。ミサイル一発で世界が変わるかもしれないという仄かな期待があったパトレイバー2の時代(しかし押井守はその時点で、それでは世界は変わらないことをすでに暗示している。この洞察は911後の今だからこそ一層際だって映る)に対して、ミサイルが落ちたくらいでは世界は何も変わりはしないというより深い諦観が透けて見える。それでは、いったい何だったら世界を変えることが出来るのか、あるいは出来ないのか。それもまたこの作品の大きなテーマとなっていくのでしょう。


 まだ第1話ということで、今回はとりあえずアウトラインの把握程度ですが、今後話数を重ねていく中で、各話に仕掛けられた情報が相互作用を起こしてより大きな物語を形成していくことが期待されます。そのあたりについても徐々に掘り下げていきたいですね。