BSマンガ夜話で結実した漫画評論の新地平

 先日放映されたBSマンガ夜話ハチミツとクローバー」の回が目を見はるような面白さでした。歴史的な回だったといっても過言ではない。

マンガ夜話屈指の回『ハチミツとクローバー』 - ピアノ・ファイア

 すでにいずみのさんが取り上げていますが、いずみのさんが長年取り組んできた視点論の成果が、夏目房之助先生を通じてついに広く世に問われる事になってますね。そして脚本家の佐藤大さんが語るハチクロの反復対比構造は、拙ブログで取り扱っている情報圧縮論とまったく同根のものです。

 漫画を読む過程で人間の脳が表現をどう認知するのかという見知と。隠された構造の解析、反復や対比、暗喩によってもたらされる感情の蓄積が情動を生むという見知と。そして表現を理解する事によって作家が読者に何を伝えようとしているのかという事が詳らかになっていくという快感。そこには漫画を読むということの驚きと喜びがあります。

ユリイカ2008年6月号 特集=マンガ批評の新展開

ユリイカ2008年6月号 特集=マンガ批評の新展開

漫画をめくる冒険―読み方から見え方まで― 上巻・視点【ピアノ・ファイア・パブリッシング】
 (編) ピアノ・ファイア・パブリッシング
 (著) 泉 信行/イズミ ノウユキ

 佐藤大さんの指摘したハチクロの反復対比構造について是非まとめるべき、とのご指名を受けましたので(笑)。私自身がハチクロの大ファンという事もありますので、近いうちに形にしたいと思っています。断片だけで具体的箇所の説明のない指摘もありましたので、その辺も含めてフォローできれば、と。