シャーリーの恋

 ちょっと、更新を止めてしまいました。今日はコードギアスR2第11話で劇的にヒロインとして返り咲いたシャーリーさんの事を書き綴ってみたいと思っています。

日常を象徴するヒロイン

 シャーリーというキャラクターはコードギアスを彩る数多のヒロインの中でも少し異色…あるいは存在感がないと評される事が多いのですが、それは彼女自身が政治的な背景を何も持たないからなんですね。どこにでもいる、どこにでもある恋をする普通の女の子。世界を巻き込む大規模なイベントが目白押しのこの作品の中ではどうしても影が薄くなりがちです。でも、だからこそ彼女の存在は特別なものがあるんですね。ルルーシュが帰る場所、本当の望み、すぐ隣にいた青い鳥として。この、なんの背景を持たない、だからこそかけがえのない存在としてはリヴァルもまたそうだったりするのですが、彼についてもまた機会があれば書きたいですね。

キスで折り返す物語

 今回、ルルーシュに扮した咲世子さんに奪われたキスは、シャーリーにとって2度目のキスなんですが、作中でルルーシュとキスをしたキャラクターは下記エントリで書いたように現時点でシャーリーとCCの2人だけなんですね。

ルルーシュとキス - 未来私考

 CCの場合は、1期最終回でのキスでルルーシュと別れ、そして2期第1話のキスによって再び物語を動かし始めました。そしてシャーリー。シャーリーもまたキスの後記憶を奪われるという事件によって物語から退場させられ、そして今またこのキスによって物語の中心に復帰したんですね。

空白の1年

 第1期14話において記憶を奪われたシャーリーはそれまでのルルーシュとの思い出を全て忘れてしまっています。にも関わらずR2において彼女は再びルルーシュに恋をし、またそれを周りが認知しているんですね。それは空白の、ブリタニア皇帝によって作られた偽りの1年の間に積み上げられた感情なんです。第1期7話「コーネリアを撃て」でシャーリーがスザクに語った、ルルーシュを気にし始めたたわいもないエピソード、そういった事がきっとこの一年にあった事を想像させて…それは、ルルーシュの本質、シャーリーの本質というのが例え与えられた偽りの記憶の中の出来事と言えども、変わっていない事の証でもあるんですね。

間違ったやり方で得た結果に意味はあるのか

 父を失い、その代償としてルルーシュのキスを得る事になったシャーリー。その時のスザクのセリフ“間違ったやり方で得た結果なんて意味がない”。これはゼロ=ルルーシュに向けられた言葉ですが、シャーリーもまたこの言葉によって言いしれぬ罪悪感を得る事になった。これは、第1期に繰り返し繰り返し問い続けられたテーマで、最終的にそれはルルーシュが全てを失って幕を閉じるという結末を迎えます。
 一転、再開したR2においては第7話「棄てられた仮面」で語られたように“例え偽りであっても”美しいものはある、そう信じるというテーマが上乗せされているんですね。それは本当に正しい事なのか、嘘に嘘を重ねてそれを守ったとしてそれは許されるべき事なのか。それはこの、嘘に嘘を重ねたシャーリーとルルーシュのファーストキスというシチュエーションで見事に問われる形になっています。

キスだけしてもらっても嬉しくない

 “キスだけしてもらっても嬉しくないのにね”1期14話「ギアス対ギアス」で、雨の中呆然と佇むシャーリーに求められるがままにキスをしてしまったルルーシュに向けられたセリフです。これはR2第7話のカレンにキスを求めるルルーシュとの対比になっていて…この時カレンは平手一発で拒絶するわけなんですが(笑)、求めているのはキスという結果ではなく、そこに至る正しい物語を求めているんですね。このあたりはカレンはやっぱりスザクに通じるキャラクターだなあなどとも思いますが、これもまた別の機会に。
 そして今回。ルルーシュ(に扮する咲世子さん)に求められるがままに脈絡もなく受け入れてしまったシャーリー。そこに至る正当なストーリーのないまま、まさにシャーリーにとっては“キスだけしてもらっても嬉しくない”状態なんですね。ここでシャーリーが求めているのは何故?という部分。なぜルルーシュは私にキスをしたの?それをルルーシュは答える義務があるんですね。果たして、どういった答えを用意するのか、嘘か、偽りか、あるいは嘘から出た誠か。たいへん楽しみですね〜。