「ソロモン攻略戦」を読む

 趣味的な、あまりに趣味的な大規模艦隊戦の緻密な描写。記録映画のように淡々と状況が進む中でカイのぼやきでもって視聴者が状況に置いてけぼりにされないギリギリの配慮をしている印象ですね。突撃艇パブリクが、描写されている限りただの1機も帰還できてないのが悲しすぎるんだけど、それを悲しいことだとは誰も言わない無常感。そしてMS戦だ艦隊戦だという状況を吹き飛ばす超兵器ソーラーレイ。

 人一人の無力さというのを描ききっているからこそ、ハヤトのコンプレックスにも自然と感情移入できる。フラウがハヤトになびくのは唐突のようにも思えるのだけれども、アムロとフラウのすれ違いというのは本編を通じて何度も繰り返し描写されてきて、アムロをずっと見てきたフラウだからこそ、同じようにアムロを見てきたハヤトに共感出来るというのは筋の通った話でもあります。

 負け戦へと突き進むジオンの将、ドズルはその軍人としての資質の高さを描きつつ、同時に生身の人間であることも平行して描く。落ち着き払って次々と司令を飛ばす合間に「コーヒーを頼む」なんてシーンを差し挟んだりする。妻と、遅く生まれた子を想い、けして弱みを見せないのだけれども死地に赴く覚悟が「強い子に育ててくれ」という言葉を引き出す。そこにある感情の揺れを台詞に頼ることなく表現するガンダムの演出の際がそこにありますね。