シュナイゼルとルルーシュの戦略の違い

 本論に進む前にいくつか確認事項を。

シュナイゼルの基本戦略

 シュナイゼルを語るとき外せない重要なキーワードに“イレギュラー”というものがあります。シュナイゼルは戦略を組むにあたって、常に想定外の事態が起こることを考慮している。単純にその場の勝ち負けにはこだわらない。それよりも相手が何を求めているのか。それを読み取り相手の選択肢を奪っていく事で、勝手に結果が得られているという状況を至上としているんですね。

 今回、黒の騎士団の指揮権を奪取する算段で、“カノン、君の読み通りに”シュナイゼルは言っています。指揮権を取ることはシュナイゼルの戦略において必ずしも必須ではなくて、ただカノンの提言が面白かったからそれに乗ってみた。そういった風情が読み取れます。

 その直前、開戦前オープンチャンネルでつないできたルルーシュに対して、素直に驚いてみせる。もともとのカノンの計略にはルルーシュの割り込みは入ってないんでしょう。にも関わらず即座に黒の騎士団の指揮権奪取の作戦に組み込むんですよね。しかも元の計略をより確度の高いものにするために利用してしまう。

 さらにその場でルルーシュに降伏を呼びかけてみたりする。当然受け入れられる訳はないのですが、ここで出てくる言葉でルルーシュの底が見えてくる。問答無用で対決を迫るのか、それとも聞き入れられない条件をつけてくるのか。先回の超合集国参加のくだりでのルルーシュの真意を確認する意図が読めます。

ルルーシュの基本戦略

 一方でルルーシュは、あらゆる可能性を想定して状況に対応するという戦略を基本としてしまっている。物事がルルーシュの想定範囲内で進めばそれはとても強靱だが、いったん想定の範囲を外れてしまうと途端に脆さを見せる。今までコードギアスの作中で繰り返し繰り返し描かれてきたシーンです。あまりに多すぎて列挙する気にもなりませんが、まあわかっていただけるかと。

 今回ナナリーと対峙する決意をする際、“いくつルートを探ってみても答えは同じだったよ”と言ってしまう。しかしそこにはおそらくナナリーを翻意させて状況を作り替えるという戦略は存在しない。シュナイゼルの行動を“ダモクレスによる支配は人を記号にするものだ”と断じきり、それ以外の意図がある可能性を排除しているのもその悪癖の一端ですね。

 これはあくまで人の意思は絶対でその信念は曲げることができないと考えるルルーシュと、人の心の移ろいやすさを理解し、状況一つでどのようにも変わってしまうと考えるシュナイゼルの、基本的な人間観の違いの差でもあります。