ビデオメーカー主導のアニメビジネスについて考えてみた

ビデオメーカー主導の場ケース

 まず深夜アニメの主流であるビデオメーカー主導の製作委員会方式のアニメの場合を考えてみます。予算規模は1億5000万円、人気ラノベ原作で1クール12話、テレビ放映は独立U局6局シンジケートというパターンです。出資内訳はビデオメーカー:1億円、レコード会社 :2000万円、玩具メーカー:1000万円、出版社:1000万円、制作元請:1000万円、と仮定してみます。

 ビデオメーカーは卸値4000円(定価6000円)のDVDを全6巻で累計5万枚の生産計画を立てる。4000円のうち2000円が製作委員会への印税、500円が製造費その他原価、1500円が荒利とします。この時点で1億円が製作委員会に渡る。
 この場合、5万本の生産をした時点でビデオメーカーの支出は1億2500万円(2500円×5万本)+出資金一億円。およそ6500万円が出資比率でビデオメーカーに戻ってきますので出資金の1億円を併せても1億6000万円を回収すればトントンです。5万本のうち4万本出荷すれば採算分岐を越える計算ですね。完売すれば8000万円の黒字。最悪でも2割の在庫で収まれば良いわけですからまあ現実的な数字でしょう。
 ちなみに1社で1億5000万円すべてを出資した場合は採算分岐は4万3750本(1億円7500万円/4000円)、完売時の利益は2500万円。これだけでビデオメーカー製作委員会方式をとる理由が分かりますね。
 

  • レコード会社の場合

 レコード会社のスキームもほぼビデオメーカーと同様の形を小規模で行うものだと考えられます。商材としては主題歌CDやドラマCD、キャラクターソングCD等々DVDに比べて商品展開を広げやすいのが特徴ですね。DVDの印税が1400万円入ってくるので、卸値1000円のCD(うち荒利500円、製造原価400円、制作印税100円とする)を3万枚刷って2万枚出荷すれば採算分岐を越える計算です。最近やたらとドラマCDやキャラクターソングCDのラインナップを揃える作品が多いですが、例え実売が3桁とかでも出荷で1000枚くらい出せれば収支が合うのでしょう。

 小規模なオタク向け製品の場合、あまり大きな儲けは期待できませんが、DVDの印税700万円が入ってくるので300万円以上稼げる目処があれば商売にはなります。だいたいプライズの企画を1本通せれば100万円〜200万円くらいの荒利が取れるようです。あとはフィギュアや抱き枕カバーを完売前提の少量生産でなんとか収支を付けて、CD等の印税収入で利益を出すという感じですかね?

  • 出版社の場合

 出版社の場合、通常特に売るものはありません。原作の売り上げ増を期待した投資+印税収入に期待ということになるのでしょうが、制作費の中から原作使用料としていくらか支払われるケースがあるかもしれません。原作使用料に200万円の支払いがあった場合、DVD印税700万円と併せて差し引き100万円の持ち出し。原作が累計で10万部くらい上積み出来れば収支はあうのかな?あとは印税収入である程度長期的な収入があればといったところでしょうか。

  • 制作元請の場合

 制作元請も特に商いはないですが、場合によってはネット配信の権利等が残っているみたいですね。こちらも出版社の場合と同様、制作費から企画制作費としてプリプロダクションの費用をもらい受ける形で収益を取っているのではないんでしょうか。1クール作品なら500万くらいですかね?投資分と併せてトントン(実際には赤字)みたいな感じになってるんじゃないんでしょうか。

  • 制作費の内訳

 各ホルダーの収支に関しては以上のような感じなのではないかなと思います。制作費1億の内訳を整理しておきます。

放映権料  2000万円
企画制作費  500万円
原作使用料  200万円
実制作費 1億2300万円
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計     1億5000万円

 12話で1話あたり制作費1000万円くらい。もうちょっといろいろ引かれるお金がありそうですが、予算の1億5000万円が何故か現場に渡るまでに目減りしている中抜きだ!みたいな話は実際はこんな感じになってるんじゃないんでしょうか。それぞれのホルダーはそれぞれリスクを取ってますし、どこが悪いという話でもないでしょう。とはいえ、作ったものが売れただけ収益があがるメーカー系に対し、制作元請は微々たる額の印税収入しか期待できません。CDと玩具で印税収入が500万円くらい上がっても、出資比率で50万円しか入ってこない。DVDの追加生産があったり、玩具が爆発的なヒットをするようなことがなければほとんど涙目でしょう。

 このモデルで制作予算の規模を拡大する場合、DVDの初回生産枚数が鍵になります。ビデオメーカーは予想販売枚数に合わせて出資金を調整すれば(読みが外れなければ)基本的に赤字は出ない。例えば3万本の生産計画なら、出資を5000万円に抑えれば8割出荷で元が取れる。その場合は実質の制作費は1話当たり700万円くらいになってしまいますが。逆にイニシャル10万枚で8割売れる予想が立てば、メーカーは2億円まで出資できる。その場合は1話あたりの実制作費は1800万円くらいになります。

 つまるところ、企画の段階で何万本のイニシャルの保証を得るかが、制作元請とビデオメーカーの綱引きになるわけですね。その場合どうしても参考にされるのが同種の企画の過去の実績になってしまう。メーカーは数字の読めない新規の企画には消極的な数字しか出せない。結果、過去に成功したものと似たような企画が乱立し、視聴者に飽きられて実売を落とす。次の企画は更にそれよりも規模が小さくなるという負のスパイラルに陥っているというのが、このモデルの構造的問題でしょう。