TIGER&BUNNYが破った常識

 大好評のうちに幕を閉じたアニメ「TIGER&BUNNY」。個人的に好みの題材ということもあり当初から注目していたのですが、よもやここまでの大人気になるとは思いもよらなかったですね。振り返って見るとTIGER&BUNNYはそれまで常識とされてきたことをことごとく破った型破りな作品でした。タイバニが打ち破った数々の常識を振り返って見たいと思います。

TIGER & BUNNY(タイガー&バニー)
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1.アニメに広告はつかない

 まず最初に目を引いたのは、ヒーロースーツにスポンサーロゴを直接貼付けるという広告手法ですね。旧来、アニメ作品にはスポンサーがつきにくい、特に深夜アニメでは自社広告以外はほとんどあてに出来ないというのが「常識」でした。それがキャラクターに直接企業ロゴを貼付けるというアクロバティックな手法で、ペプシソフトバンク牛角amazonといった直接アニメと関わりのない大企業のスポンサーを獲得したというのは快挙ですね。今までも実在商品を作中に登場させるいわゆるプロダクトプレイスメントといった手法は試されてきましたが、タイバニの成功がこういった新しいタイプの広告の在り方に一石を投じるかも知れませんね。

2.ヒーローものは当たらない

 深夜アニメではいわゆる勧善懲悪のシンプルなヒーローものは当たらないというのも半ば常識と化していました。ヒーローものは日曜朝の子供が見るものという先入観からか、深夜帯の作品は一ひねりあるビターな作品が好まれる傾向があるんですね。これに対してタイバニは、主人公たちを大人の顔を持った「職業ヒーロー」として描くこと、またそれぞれ魅力的な個性を持った8人ものヒーローを同時に描くことで幅広いファンの受け入れを可能にしたんですね。毎回1話完結形式のシンプルな脚本をいかに飽きさせないで見せるかということに注力したのでしょう。

3.CGアニメは当たらない

 CGと言っても今は幅広く、まったくCGを利用していない作品というのもほとんどないのですが、いわゆる3DCGでキャラクターを描いた作品にはヒット作がない、という常識もタイバニは破ってくれました。ヒーロースーツは3DCGで、生身の人物はセルアニメで描くことで、3DCGキャラクターの課題である表情の乏しさをクリアし、また同時に3DCGならではの仕草の細かさ、無駄な動きの多さでよりリッチな画面作りに成功しているんですね。特にセリフとセリフの間の細かい仕草は独特の間を持たせ、実写作品に近いテイストを醸し出していますね。脚本に舞台やテレビドラマで活躍する西田征史さんを抜擢したのもそういった狙いの一環なのでしょう。

4.ヒット作には前評判が必要

 これは常識というほどのことでもないかもしれませんが、放映前の前評判と放映後の人気がかけ離れている作品も珍しいですね。今年前半に人気を博した「魔法少女まどか☆マギカ」も比較的落ち着いた前評判から飛び抜けましたが、それでも上位5作品にははいる注目作でした。タイバニに至ってはほとんどブービー人気、完全新作のヒーローもののCGアニメですから、従来の文脈で注目を集めるというのがそもそも難しい話で、初回のUSTREAMでの配信は最大同時視聴が1500人程度しか集まらなかったんですね。それが最終回では7万人超の人を集めるお化け番組になるんですから世の中というのはわかりません。これはインターネットを利用した全国同時配信、また手厚い見逃し視聴への対応の賜物でもありますね。一度見逃したらリアルタイムでの参加が出来ない地上波オンリーの作品ではこうはいきません。1話完結主体ということで途中から入りやすかったというのも大きいでしょうね。

5.映画館ではケータイはOFFで

 最後にタイバニが破ったとびきりの常識はこれでしょう。前代未聞の最終回の劇場同時上映。全国40を越える劇場に、深夜にも関わらず2万人以上を動員したこのイベントはそれだけでも十分に型破りなのですが、更に劇場ではケータイをOFFにして静かに作品鑑賞をするという常識まで壊してしまったんですね。

All episodes of ‘Madoka Magica’ now available on conventional and Android phones – ページ 11971 – アニメ!アニメ!ビズ

 劇場でのTwitter開放。しかもTwitterログをスクリーンの端に同時に映し出すという、普段パソコンで見るのとまったく同じ環境の再現。これによって本当に全国のファンと一体感を持って最終回を迎えることが出来たんですね。まさに歴史的なイベントだったと言って良いでしょう。これもまたタイバニが切り開いた道に後から続く作品も出てくるでしょうね。


 TIGER&BUNNYという作品は、もちろん型破りなだけでなく、特にキャラクターの関係性などは現代の人気作のフォーマットを欲研究した上で構築されている堅実な面も多々あります。同時にライブ感を重視する余り特にシリーズ構成については難ありといわれる側面もあるのですが、アバタもエクボというべきか、けして魅力を損ねる形にはなっていないところにも注目したいですね。この作品が何を求められているかを理解した上での取捨選択だったように思います。

 ここまでの人気作になった以上当然2期も期待されますし、実際それを匂わせる動きもありますね。10月からは地上波での再放送も決まっており、これから改めて作品に触れる人も増えるのだろうと考えると胸が熱くなりますね。