ルルーシュの罪が贖われる時

 “シャーリー、俺はどうやって償えばいい…教えてくれ…教えて…”

 いつか、こんな日が来ると信じていました。シャーリーが死んだあの日から。ルルーシュは、いつも後になって気が付く。自分が、どれほど愛されていたかということに。ルルーシュを愛してくれた人たちが、ルルーシュに何を望んでいたかということに。

ルルーシュの本当の望み

 ユフィ、シャーリー、ナナリー…そしてロロ。彼女たちが望んでいたのはルルーシュが平穏で優しい日常を取り戻すこと。ギアスの力に振り回されてもはやそれは遥か遠い幻になってしまったが…それはいつもルルーシュのすぐ側に、手を伸ばせば届くところにあったんですよね。例えそれが自らが望んで得た状況ではなかったとしても、その時感じた平穏、幸福感…そういったものは決して嘘ではなかった。それは第7話「棄てられた仮面」でルルーシュが夢見た光景。両手を血に染めもはや後戻り出来ないルルーシュが本当に望んでいたのは、その平穏だった。全てを失ったルルーシュは、ロロに優しい嘘を語りながら、ようやくそのことに思い至ることが出来たんですね。

憎しみの連鎖を断ち切ること

 それにしても、残されたルルーシュにいったい何が出来るのか。皇帝を討ち果たすことはもはやルルーシュにとっては意味はない。そんなことをしてもルルーシュの望んだ世界は帰ってはこないし、死んでいったものたちの望むところでもない。ルルーシュに残された道、ルルーシュがすべきことは、ギアスによって生まれた憎しみの連鎖を自らの手で断ち切ること…そのためにルルーシュが取るべき道はただひとつだけ、そう思っています。

 それは、稀代の奸雄ゼロ、反逆の皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして、犯した罪をその身に一心に受けること。全ての人の憎しみを自分一人で背負うこと。それだけが、ルルーシュに出来る唯一の贖罪。あまりにも孤独で報われない道ではあるが…そのルルーシュを見て悲しく思う人はもういないのだから。今週のラストでの決意は、その地獄の道程に皇帝も道連れにしよう、共犯者になってもらおうと思っているわけですね。それは、あくまで今ルル―シュが考えの及ぶもっともらしい結末にはそれが相応しいから、というだけであり、必ずしも皇帝の道連れはルルーシュの最後の願いの必須の要件ではないということは、書き留めておきたいと思います。

フレイヤの光…新たな憎しみの火種

 それにしても先述しましたが、フレイヤの閃光による被害が…想像を遥かに絶する規模で…この事実を何事もなく受け流しているシュナイゼルという人物のことが少しわからなくなってきています。これは個人的な個人的な考え方ですが…人は自分が顔と名前を思い描く事の出来る数以上の人の死の責任を負うことは出来ない…何十万何百万あるいはそれ以上という人の死を受け入れるには、それを人とは思わない…ロイドがニーナに迫った、心を壊す覚悟が必要なんですね。シュナイゼルがこの悲劇を盤上のゲームとしてしか捉えていないのだとしたら、やはり彼もその欺瞞の報いを受けるべきなのかも、しれません。あるいはその罪すらルルーシュが背負っていくのだとしたら…それはひとつの物語の在り方かもしれませんが。

CCとカレン、素顔のルルーシュを知る唯一の存在

 先ほど、ルルーシュの道行きを悲しむ人はもういない、と述べましたが、ただ一人だけルルーシュの全ての側面を知って、それでもルルーシュを受け入れていた人物が一人だけ残っているんですよね。それが、カレン。カレンはかつてルルーシュに対して、私たちを騙し、利用していたのかと問い詰めた。しかしそれは今となってはお互い様なんですよね。カレンもまた、ルルーシュの本心を知りながら黒の騎士団のリーダーとして、ゼロを利用してきた。カレンもまた、いつも後になってから気が付く子なんですよね。あの時ルルーシュが何を思ってその決断を下したのか。カレンは理解するでしょう。そして理解した以上、その道行きを邪魔をすることも出来ない…あるいは地獄の道行きをルルーシュとともに歩むという選択肢もあるが、カレンにはもう一つ託された「すべきこと」が残っている。それが、C.C.の存在なんですよね。

 かつてブラックリベリオン後に行動を共にしたC.C.とカレン。そこで聞かされたであろうルルーシュの本当の姿が今のカレンを形作った。そして記憶を失い全てを忘れたC.C.に、ご主人様…ルルーシュの真の姿、元あったルルーシュとC.C.の関係を伝え直すことができるのも、カレンただ一人なんですね。例え全てを伝えたところでそれは元のC.C.に戻るわけではない。それでも、カレンはそれをすべきなんです。ルルーシュが何を望み何を愛したのか。それを伝えるのがカレンの残された役目。そしてそれを知るのにもっとも相応しいのが今のC.C.なんですね。