「激闘は憎しみ深く」を読む

 まずサブタイトルが素晴らしい。砂漠に風吹きすさぶ中、明らかに戦力不足な中でラルの仇討ちを誓うハモンの心情がくっきりと浮かび上がる。身を清め、軍服に身を包むハモンの決死の覚悟が痛いほど伝わってくる。生きては戻らない。これは戦争ではなく、私情による報復なのだと。それを承知の上で死線へと赴く兵たち一人一人に声をかけるハモンさんが、また凛々しくも美しい。


 ラルの襲撃によりボロ雑巾状態のホワイトベース。人も、兵器も満身創痍の中でリュウ・ホセイという人間がいかにホワイトベースの要となっていたのかが描かれていきます。浮上するホワイトベースと共に描かれる簡素な墓が、先の戦いで失ったものの多大さを物語っている。この戦いで失ったのはリュウだけではない。しかし、それにしてもリュウ・ホセイという人物は大きかったということなのだろう。


 それにしても、カーゴの特攻、それにガンダムの爆発の威力まで含めてアムロと心中を図るハモンさんの「本当に、好きだったよ、坊や。」という台詞の濃厚さには思わず戦慄する。これほど、絶体絶命のピンチというのは今後も一度もないのではなかろうか。情念が人を殺す、富野成分の沁み出し様に深く心を抉られます。

 ところで今回は珍しくも空中換装をシナリオに組み込めたため、アバンがちゃんとした状況説明になっていましたね。そして予告編で空中換装による危機が語られたりします。このあたりのスポンサーの意向に対する含みもまたテレビ版のおかしみではありますね。