「セイラ出撃」を読む

 いつの間にか中央アジアを征西しているホワイトベース。どうも設定上は「再会、母よ」の前後で太平洋を渡っているようなんですが、そのあたりの説明がないのでわりといつも混乱します。伝令の合言葉がサボテン(アメリカ大陸原産)だったりするのも混乱に拍車をかけますねw。

 それはそれとして、今回の見所は自分たちが軍属なのか、義勇兵なのかで揺れるホワイトベースクルーそれぞれの立場、ですね。正規の士官教育を受けているブライトと、セイラやアムロ、カイといった才能があるがゆえに兵として戦うことになったものたち、その中間でアムロたちのフォローに回っている正規兵のリュウや、民間人の立場からブライトを思いやるミライという立ち位置が面白いですね。

 キャラクターの呼び名ひとつとっても、ジオン兵たちはそれぞれの相手を階級つきで呼び習わしている一方で、ホワイトベースクルーたちは呼び捨てあるいはさん付けで呼び合っているというのも注目点でしょうか。命令を無視して(しかも無線を切って連絡がつかないようにして)ガンダムで勝手に出撃したセイラに対しても、厳しい態度に出れずに「セイラさん」として扱ってるあたりがブライトの逡巡が見えて面白いです。

 今回、腹に一物を抱えたマクベが登場したわけですが、ジオン側の一角の将はみな腹心の部下を抱えているのが面白いですね。シャアならドレン、ランバ・ラルならクランプ、マクベならウラガンと、ジオンという国家ではなく、尊敬する個人に忠誠を誓っているあたりが重層的な魅力になっていますね。

 見所といえば、アムロの操るガンキャノンの無双ぶりがやはり凄い。シャアがてこずったという連邦の白いヤツが案外大したことなかったと思ったら、噂に聞いてない赤いヤツがやたら手強くてさぞかしラルさんもビックリしたことでしょう。へぼガンダムを捕獲しようとしたら逆にザクを捕獲されたという構図も面白いですね。コズンを捕虜としたことで、ホワイトベースをより軍隊として運用しなければならない理由が強化されているあたりも上手いところでしょうか。