「時間よ、とまれ」を読む

 膠着した前線のジオン兵の日常が描かれる「時間よ、とまれ」。劇場版に含まれなかったため単発エピソードの傑作として認知されていますが、構成的には前回の「再会、母よ」と対になっているんですよね。ジオン兵の「上手くいきゃあ本国に帰れるぞ。こんな虫のいない、清潔なジオンの本国によ」という台詞は前回のセイラさんの台詞と同種のものですよね。序盤のエピソードで地球にしがみつく老人たちを散々描いた後で、若者たちはスペースコロニーをこそ、故郷として認識している。この世代間ギャップというのは、今後も続いていくガンダムシリーズを支える大きな構造の一つですね。

 再び登場のマチルダさんのクールビューティーぶりにすっかりのぼせ上がってしまっているアムロ少年ですが、それを見るフラウ・ボウの動きも見逃してはいけません。画面中央に威風堂々と描かれるマチルダさんに対して、ロングで画面端に描かれるフラウは、アムロの視線の中に入っていないことを表現しているんですよね。ブリッジでマチルダさんを見送るアムロのシーンで、アムロを見るフラウに、アムロが重なって描写され、次のカットで画面手前に向かってフラウがアムロから離れていく。この一連のシーンで、アムロにあこがれていたフラウの心が次第に離れていく様が表現されていてとても味わい深いです。


 
 メインエピソードである爆弾作戦ですが、モビルスーツが戦艦を易々と撃沈する世界で、今度は人間とモビルスーツというサイズ差のある相手同士の戦術が描かれるのが白眉なんですよね。こういう地味なエピソードの積み重ねが世界に厚みを加えていくんですね。爆弾解体シーンが、おおよそ実尺にあわせてあるのも面白いところで、「あと12分」と言ったところでちょうど残り時間が12分少々なんですよねー。実際はもう少し尺余らせてますので、8分ほどなんですが、「残り18秒」のカウントダウンはきっちり18秒ですね。「大気圏突入」の回なんかもそうなんですが、体感として時間の流れを意識させる演出が上手いんですよね。

 縮尺とか、爆発の威力とか、こまけぇことはいいんだよ!といいつつ今週のオマケ。オムルさん早着替え。