「女スパイ潜入!」を読む

 アムロ先生のメカニック講座から始まる今回。みな妙ににこやかに講義を聴いてる中で、周囲が軍隊に染まっていくことにたまらない違和感を抱くカイの描写が光ります。

 黙ってホワイトベースを降りるカイを、誰も止めないという描写も良いですね。先週にレビル将軍が言ったように明らかに軍規違反なんですが、その軍規に縛られることを嫌っているカイを止める理由がホワイトベースの仲間たちにはないんですよね。軟弱だなんだって言われても、守るため、生きるために武器を手に取るのと、相手を倒すために武器を取るのでは意味が全く違う。ある意味、カイの神経のほうがずっとまともにも思える。

 ミハルと接触したカイが、わりと早い段階からミハルの意図に気付いている描写もいいですね。情が移って、ぽろっとホワイトベースの情報を漏らすのは、明日の夜には出航するのだから、ここで知られてもそんなに大事にはならないだろうという読みもあったんでしょうね。大したことのない情報で、ミハルはいくばくかの報酬も得られて八方丸く収まるじゃないか、くらいの気分だったんでしょう。これはカイの読みが甘かったわけですが…相手が迅速を旨とするシャアでなかったら、あるいは間違った判断じゃなかったのかも知れません。その後カイがホワイトベースに駆けつけたのも、自分の漏らした情報でピンチに陥っているのかも知れないという後ろめたさもあったんだとは思いますね。

 報酬の量からして、それがおそらくは危険な任務であることは承知していたであろうミハル。それでも弟たちに心配はかけないようにかける言葉は最小限にならざるをえないその心境がまた胸に迫ります。